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「梅木博士ですね?」
 空港の人影まばらなロビーで不意に呼びとめられた。振り向いた初老の紳士を揃いのスーツを着た若い女が5〜6人でとり囲む。
「君たちは?」
「防衛庁からお迎えに上がりました」
 女の見せた身分証を確認する。
「…まさか女性のお出迎えとは思いませんでしたよ。滝沢君が来ると聞いていましたが?…」
「滝沢は途中で敵の妨害に遭い、バックアップの私たちがまいりました。さあ急いでこちらへ」
 女たちに促され、博士が歩き出そうとしたその時!
「待てっ!」
 凛とした声が響き渡る。中央エントランスの前に1人の人影。
「博士!そいつらは防衛隊なんかじゃありません!悪の秘密結社ジェイドの手先です!」
「ど、どういう事だ!?」
 博士が驚きの声をあげる。
「本物はこっちです!」
 青年の背後から1人の男がよろよろと進み出た。制服から察するに防衛隊の士官である。ケガをしているらしく歩くたびに顔が苦痛に歪む。
「は、博士っ!そいつらは偽者です!に、逃げてください!」
「君は滝沢君!それじゃあ!?…」
 顔見知りの士官を見て博士は即座に状況を理解する。
「くそっ!あと少しというところで!博士を連れていけ!」
 女の1人が仲間に命令する。しかしその時シューッという噴出音と共に博士の突き出した万年筆から白い煙が吹き出した。護身用の催涙煙幕である。
「きゃあああっ!?」
 女たちが怯んだ隙をついて逃げ出す梅木博士。
「追え!逃がすなっ!」
 だがその前に1つの影が立ちふさがる!女たちの正体を暴いた先程の青年である。
「ここから先は通さん!機甲服装着!」
 号令と共にブレスレットのスイッチを押すとその体が白光に包まれ一瞬後には金属的なバトルスーツが全身を覆っていた。
「おまえは防衛隊の機動戦士!こうなったら!」
 掛け声と共に女たちが身を翻すとその姿が瞬く間に変貌した。桃色のスーツに身を包み、顔にはどぎついメイクをしている。
「戦闘員に女がいるとは知らなかったな。だが手加減はしないぞ。来いっ!」
 奇声を張り上げて襲いかかる女戦闘員。素早い動きでパンチやキックを繰り出してくる。しかし防衛隊の誇る最新鋭のバトルスーツには全く通用しない。
「ぎゃっ!」
 1人の女戦闘員が吹っ飛ばされて床に転がる。
「ぐぇっ!」
 続いてその上に2人目が投げ飛ばされる。
「ひぃっ!」
 更に3人目が折り重なる。
 こうして次々と女たちを投げ重ね、ほどなく全員を床に積み上げた。苦しそうにもがき、必死に起き上がろうとする女戦闘員。
「お、重い…」
「苦しい〜!」
「は、早くどいて」
 だが体が言う事をきかず懸命の努力も弱々しい。敵はいまや完全に無防備だ。
「とどめだ!」
 青年が垂直にジャンプすると背中のジェットで天井ギリギリまで跳び上がる。そのまま鮮やかに宙返りをすると折り重なった女戦闘員たちのてっぺんに踵から飛び降りる。
「グラビティーハンマー!」
 特殊鋼製の踵が一番上の女戦闘員の腹に深深とめり込み、そこから強力な衝撃波が放たれる。それは彼女たち全員の中を荒れ狂い体内組織を焼き尽くす。
『あああああぁぁぁうあああぁぁぁぁぁーーーーーーーっっ!!』
 断末魔の悲鳴を張り上げながら激しく苦しみ悶える女戦闘員。やがてその体は高熱を発し、耳障りな変調ノイズをたてて消滅していった。跡に残ったのはブスブスと煙を立てる僅かな灰ばかりである。
「君が防衛隊の対ジェイド特別戦闘部隊なのかね?危ない所を助けてくれてどうもありがとう」
 近付いてきた博士に向き直ると青年はブレスレットのスイッチを再び押す。その姿は瞬時に元の姿へ戻る。
「いえ、博士の方こそお怪我が無いようでなによりです。申し遅れました。僕の名前は村瀬光一。お察しの通り対ジェイド部隊『スカイフォース』の一員です」
 そういうと青年はにっこりと笑った。

 最近の特撮しか知らない方々は御存知無いでしょうが、昔の作品には稀に女性の戦闘員が登場しました。その中でも「人造人間キカイダー」及び「キカイダー01」に登場した女戦闘員はピンク色の全身タイツに身を包んでいました。ピンクの戦闘服というと世間的に馴染み深いのはむしろ戦隊モノの紅一点(その原点はもちろんモモレンジャー)でしょうがネタとしてはこちらの方が源流でしょう。
 それにしてもピンクですよピンク!おおよそ戦闘服には考えられない色です。ピンク、つまり桃色っていうのはズバリ「女色」です。「ピンク=女」という記号的発想に基づいた意匠というわけですね。実を言うと演者の性別を隠すために用いられた手管です。単に女性というだけでなく「子供っぽさ」「幼さ」という印象を伴うピンク。しかしそれ以上に重要なのは「お色気」、それも「あまり品のない」お色気です。「ピンクサロン」や「ピンク映画(古い!)」といった用法はその実例ですね。もともとは可愛らしい色(それは前述した「幼さ」の要素)ですが、それを失うととたんに安っぽいいかがわしさを強烈に発散するのもピンクなのです。そしてそれは「黒」には無いある種の「生臭さ」を持っています。それを魅力と感じられるかどうかが好みの分かれ目。
 そんなわけで私は「ピンク戦闘員」が大好きです。悪の手先が女性で、しかもあんな恥ずかしい格好でまじめくさって戦うなんてイロモノ大爆発!まあ正直に言って今日的なネタではないんですが、そのアナクロさもエロネタとしては悪くない味わいではないかと思うわけです(世代を選ぶかもしれませんが…)。
 もう1つの要点は「十人並」。「ショッカーの女戦闘員はブスだ」という不満をよく聞きますが、首領とか幹部といった高い身分の方々はともかく下っ端ならあるていど美醜のバラツキがあってもいいと思います。これは組織の雰囲気によっても異なりますけどね。なにも全員がモデル並の容姿でなくてはならないという道理はありません。小物っぽい人間臭さを出す場合などでは過度の美しさはむしろ非効果的です。要は「チョイ役にはチョイ役の顔があってしかるべきだ」と思うのですよ(まあ実写の場合はチョイ役にまでそんなに美人ばかり揃えられないという実際的な制約もありますが)。
 今回は「折り重なり」の第2弾でもあります。人数が増えたのはともかく、だいぶデタラメですね(これでも塗り段階で直したんですが…)。そして初挑戦「肉体消滅」。フィルタを使った安直なやり方ですが、思ったより感じは出たように思います(旧ハニーのパンサー怪人風)。最後の過程までは見せてませんが私としてはこの位の一番おいしいミディアムな消え加減までで充分かなと(笑)。


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