見渡す限りの広い操車場。幾重にも走る線路の間を1人の男が大股で歩いていた。一見すると労務者だが、その見事な体格は単なる肉体労働者のそれを明らかに逸脱している。険しい表情の男はわき目も振らない。行く手遠くには大きな倉庫が見える。貨車が直接に乗り入れて荷物の積み下ろしをする施設だ。
「待ちな!」
 目的地まであと100メートルほどに近づいたとき男は呼び止められた。剥き出しの敵意が込められたその声は若い女のものであった。直後、数人の女たちが貨車の影から悠然と歩み出る。
「こっから先は立ち入り禁止だよ」
 女の1人がそう言った。もちろん操車場は部外者立ち入り禁止だ。しかし男はいささかも動じる様子はない。
「そう言うおまえらこそ、ここで額に汗しているような人間には見えないぜ」
 女たちは顔を見合わせてせせら笑う。彼女たちは全員とも体にピッタリしたミニのワンピースに身を包んでいる。胸の上部が大きく逆三角形に刳られ、伸縮性の衣服に押し込められた豊かな乳房がそこから大胆に覗く。柄はなんと軍服のような迷彩だ。どう見ようが、貨物会社の従業員よりは「軍事産業のキャンペーンガール」といった風情だ。
「そこをどいてくれよ。向こうに用があるんだ」
 男は倉庫に向かって顎をしゃくる。
「立ち入り禁止って言ってるだろ?聞こえないのかよォ…」
 女の声がみるみる怒気を帯びる。
「悪いが、神様が命じようと戻るつもりはないぜ。もっとも、おまえらに俺を帰す気があるとも思えないがな…」
 女の1人が残忍な笑みを浮かべる。
「わかってんなら無駄口たたくんじゃないよ」
 3人の女たちは男をゆっくりと取り囲む。
「やっぱりヤツらの手先か…妹はどこにいる?」
「どこにいたって関係ないんじゃない?あんたはここで死ぬんだからさァ…」
 まるで男に媚びるような艶っぽい声で殺しを口にする女。男はただ苦笑する。
「あそこにいるんだな?」
「…フン!トラック運転手がイキがるんじゃないよ!あたしたちに逆らったら長生きできないって事を教えてあげるわ!」
 言うなり最初の1人が襲いかかって来た。女の拳が男の腹部をまともにとらえる。だが男は直立したまま微動だにしない。女の顔に驚愕の表情が浮かぶ。まるで岩のような硬い感触。極限まで鍛え上げられた腹直筋である。
「まるでシロウトだな。パンチに全く腰が入ってない。おおかた渋谷あたりのチンピラ女に迷彩服を着せて兵隊に仕立てたんだろう?」
「ちくしょう!ナメやがって!!」
 同じ位置からの回し蹴り。高い打点は頭部を狙ったものだ。目一杯に脚を振り上げたためスカートがめくれあがり中から真紅の下着が覗く。美脚の蹴撃を男は右手1本で軽く止め、そのまま相手の方へ強く押しやる。
「うわあっ!?」
 無様にひっくり返り、したたかに尻を打つ女。大股開きでパンティー丸出しの醜態である。
「女が簡単に脚を開くもんじゃないぜ。育ちの悪さがバレる。どうせならパンツも迷彩にしたらどうだ?」
 ここで男は初めて構える。その目が獰猛な光を帯びる。
「組織のヤツらにゃ情はかけねぇ。例え女でもな…」
 2人の女が仲間を助け起こす。相手は完全にキレた。ナイフのような殺気が張り詰める。改めて獲物を包囲し、じりじりと間合いを詰めてゆく。
「…死にな!」
 最初の1人が再び仕掛ける。だが女がパンチを繰り出そうとした時には相手の拳がみぞおちにめり込んでいた。
「ぐぇっ…!?」
 口から勢いよく吐き出した胃液には赤いものが混じっている。
「さっきのお返しだ…」
 苦悶に動きの止まった敵の腕を取って投げ飛ばし、背中から思いきり地面に叩きつける。
「げぅっっ!!」
 そして、とどめの一撃を無防備な腹部へ垂直に打ち下ろす。
「ぅあ゛ああああぇぁぁぁぁーっっ!」
 腹筋を貫き通して内蔵に致命的なダメージを与えた手応えを確かめると男は飛び退って次に備える。始まってから10秒も経ってはいない。
「ルミっ!」
 倒された女の名を仲間が叫んだ。
「ガ…グ…ゲォ…!!!」
 ルミと言う名の女兵士は断末魔に激しくのたうち、死の踊りの最期に「ゲフっ」と大量の血を吐くと動かなくなった。
「てめえェェェ!!」
 仲間の死に逆上した女が猛然と襲いかかる。多くの場数を踏んだ兵隊だ、この程度で怯みはしない。ただし相手の実力は完全に見誤っていた。真正面から組み合う。そしてすかさず急所蹴り。彼女はこの技で幾人もの男を地獄に落としてきた。だが膝蹴りで簡単に合わされる。
「くっっ!」
 向うずねをしたたかに打って思わずうずくまったところへ追い討ちの蹴り上げ。
「あぶっっ!」
 ふらふらと起きあがった女の襟を掴み顔を間近に引き寄せる。口紅と血で赤く汚れた顔に恐怖の色はなく、憎悪に満ちた眼差しで男をにらみ返す。
「いい根性してるな。おまえほどの美人でそんだけの度胸がありゃあ、もっとマシな人生を送れたろうに…安易に悪へ走るから…」
 自分を中心に女の腕を振り回して近くの貨車に叩き付けるとそのまま1回転し渾身の肘を打ち込む。
「がああああっっ!!」
 豊かな胸のど真ん中に一撃がきまると何トンもある車両がガタンと大きな音をたてた。いかな巨乳であろうと堪えられる衝撃ではない。ワンピースの胸元がちぎれ飛び、たわわな膨らみが弾けるように勢いよく踊り出る。揺れの余韻が収まると柔肉の谷間に内出血のシミが黒々と広がって来る。
「こういう死に方をするんだ…」
 男が冷徹に言い捨てる。
「う…ぷ…んむ…んんっっ!!」
 苦しいのか、はだけた乳房を持ち上げるように両手で抱え、目を見開いてブルブルと全身をわななかせる女兵士。大量の熱い物が込み上げる。それは濃厚な赤い液体となって口の端から溢れた。女の瞳が光を失いズルズルとくずおれ、そのまま足をMの字に開いてペタンと座り込むと力なくこうべを垂れる。
 最後の1人は焦っていた。もはや相手がただの運転手でないことは明らかだが、問題はこの危機をどうやって切り抜けるかだ。とても自分の殺せる相手ではない。だが逃げようにもハイヒールを履いた足では走る事もままならない。踵が鋼でできた靴は強力な武器だったのだが…。しかも女を相手にあの一切ためらいのない戦いぶり、命乞いをして見逃してくれる相手かどうか、はなはだ心許無い。
 男が無言で近付いて来る。その時、女の目がある物を捉えた。
「ま、まってよ!わ、わかったわ。アタシの負け!」
 女は態度を豹変させる。
「ねっ?もうこんな稼業からは足を洗うからさ!ねェ、許してェ」
 手を合わせてしなを作る女。しかし男の表情に変化はない。思った通りだ。女は少しずつ後退する。
「そんなコワイ顔しないでよォ…もし助けてくれたらイイコトしてあげるからサ」
 女はそろそろと移動していた。目的地は線路脇にある小さな物置だ。その傍らに錆びた鉄の棒が何本も無造作に放ってあることを彼女は知っていたのだ。恐らくは何かの工事で使った鉄筋の端切れだろう。女は壁際にまで移動すると追い詰められたフリをして男を引き付ける。目の端で確認するとやはりあった。敵はこの事を知らない。
「ま、まさか無抵抗の女を殺すようなマネしないわよね?アンタ男でしょ?強い男は女に優しくするものよ」
 男は黙ったままだ。
「じょ、冗談じゃないわよ!はした金で雇われて命捨てるなんてゴメンだわ!」
 泣きそうな声だが目は相手との距離をじっと測っている。そして…。
「いやあああっ!!」
 恐怖にしゃがみこんだ風を装って鉄棒に手をかけると起き上がりざま思いきり突き出す。男の目を狙った素早く正確な一突き。女は確かに元チンピラだったが、組織に入って暗殺の訓練は受けているのだ。その先端は眼窩から頭蓋を突き破って脳髄をグチャグチャにする…はずだった。
「くっ!?」
 男の手が鉄棒の先を握り締めている。怒りに燃える目。
「この手で何人殺した?」
 棒を受けた手をそのまま力強く振り上げると女の体は軽々と宙に舞う。
「キャアアアアアアっ!?」
 地面に落下し、必死で起きあがった女の腹に衝撃が走る。
「がうっ…!?」
 細くくびれた女の胴体をヘソから背中へ鉄筋が貫いていた。
「う…ぐっ…!」
 思わず抜こうとして手をかけるともはや理解不能な激痛の余り視界が暗くなる。己が死を悟った女は血が出るほど唇を噛み、終わる生をかりそめに繋ぎ止めると、血の気の失せた必死の形相で男に向かい一歩一歩進み始める。男は相手を待つかのように静かに佇んだままだ。その目に初めて憐れみが宿る。血まみれの腹を押え、遠くなる意識と戦いながら、女は遂に男の目の前までやって来た。そのままもたれかかり、真っ赤な両手でシャツを掴んで男にしがみつく。そしてキッと上目づかいに睨む。
「…や、やってくれたわね…」
 それは絞り出すような声だった。
「あ、あたしたちを倒した、くらいで…い、イイ気になんないで…よね…あの中には、まだ…仲間が、お、大勢…いるんだから…」
 そこで女はいったん言葉を切り、目を閉じる。全身が小刻みにわななく。それから再び目を開ける。
「先に…地獄で、待ってるわ…」
 目を合わせないまま呟くようにそう言うと、女は力尽き、くずおれていった。
「悪いが相当待たせるぜ。それまでにたっぷりめかし込んでおいてくれよ」
 斃した敵には一瞥もくれず、男は再び倉庫に向かって歩き出す。後には僅かな金の為に殺し屋へ身を落とした愚かな娘たちの亡骸が無残に横たわるのみ…。

 落書きの割には妙に塗り込んでます。おおっ!初の打撃物!
 これ、実は版権キャラ物(しかもゲーム)なんですけど、判ります?
 さてネタは何でしょう?列車にボディコン女だから「ルナーク」?チッチッチッ、そんな甘いモンじゃありません。…「単騎狼ウルフAT」って知ってます?MSXゲーム史上に残る戦慄の問題作(笑)。正にユーザーを震撼させました!「スゲぇ…(絶句)」これがゲームを見た人の一様な感想。プレイすればそれを遥かに上回る感動に悶絶します(コレを基準にすりゃあほとんどのクソゲーは「傑作」に格上げです)。私の周りでは語り草の1本でした(笑)。内容は…一応「ファイナルファイト」形式…って言ったらファンに殺されそうなので単に「殴りゲー」と言っておきます。私は…当時980円(もちろん捨て値)で買いました。いや〜、アレにこんだけ出す人間もそうそういないでしょうが、「ザコに女がいる」というただそれだけの理由で購入を決意!後悔など!…少ししました。発売はテクノポリスソフト。それにしてもここの商品は軒並み低劣でしたね〜。他に「おとめ・ぱーてぃー」「シェナンドラゴン」「リウィード」…よくも買ったよなぁ…最後のなんてマシン(X68K)も持ってないのに…。でも全て特売品!(¥980)。1つだけマトモな値段で買ったのが「コンチネンタル」という雑魚女RPGで、これはネタとしてまあまあの作品です。振り返ってみるとけっこう雑魚女の登場するゲームが多かった。「おとめ・ぱーてぃー」を除いた購入作品は全てそうです。しかもこの「単騎狼」を除いてはザコ全て女という構成…ひょっとして意図的!?だとすると惜しい!あれで開発力が高ければ、いや、せめて他社並だったら!(ため息)。
 「単騎狼」はそんなテクポリソフトの中でもズバ抜けてキツイ1本だったんですが、正直、作者には敬意すら覚えました(笑)。だって、極限までショボいグラフィックなのに女ザコをわざわざ2種類(ボディコンミニスカとハイレグレオタ)も用意してあるんですよ!しかも!ヘボいなりに色気を出そうとしているのです!おまけに!ディスクステーション(MSXで発行されたディスクマガジン…と言って判るのか?)に収録された体験版は敵がその女ザコ(ハイレグ白)だけという特別版!これはもう確信犯としか思えません。ゲームの女ザコっつったらポイズン&ロキシーが「不動の4番」ですが、それではイマイチつまらないのであえてマイナーネタに走りました。
 しかしコレ、本当に版権キャラ絵と言えるのか!?これではほとんど「想像図」、というか創作(少なくとも服は迷彩ではなく無地…というより「単色」…って、そんな事が問題じゃないんですけど…)。理由は現物を見れば瞭然。あ、でも絶対に物件追跡なんかしないでね。結果に激怒したとしても私は知りません(笑)。


サイト管理者:MET
met@mnl.sakura.ne.jp

←戻る