看護婦A「みどりちゃん、もっと安全な病院に移ることになったの」
看護婦B「さあ、私達と一緒に来て」
みどり「え…?」
車椅子の少女に近寄る若い看護婦2人。生まれつき足の不自由なこの幼い娘はある秘密結社にからむ事件の重要な証人であった。より安全な施設へ移るという話は確かにあったのだが、みどりは戸惑っている。
みどり「そんなのおかしいわ。だって今日はおかあさんがお見舞いに来てくれるはずだもの。それなのに…」
看護婦A「お母様も後からいらっしゃるわ」
看護婦B「なにも心配はいらないのよ」
猫なで声で答える相手を怪訝そうに見ていた少女が何かに気付いて突然に身を硬くする。
みどり「…あなたたち、ここの看護婦さんじゃないでしょ?」
いきなり問い詰められてうろたえる2人。
看護婦A「な、何を言うの」
看護婦B「バカな事を言ってないで、はやく来るのよ!」
しかし少女は怯むことなく相手をにらみかえす。
みどり「だって、この病院の看護婦さんは制服の色がピンクだもの!」
ビシッと指さされてハッと自分の服を見下ろすニセ看護婦。その表情から偽りの優しさが霧消する。
看護婦A「お、おのれ〜、子供のくせに細かい事をゴチャゴチャとっ!」
看護婦B「ええい、もう無理矢理にでも連れて行くわよ!」
みどり「きゃあーっ!!」
謎の声「そこまでだっ!!」
看護婦A&B『だれだっ!?』
キッと振りかえったニセ看護婦の前にはライダーの勇姿があった。悪の企みは全て見破られていたのだ。観念した2人の顔が憎しみに歪む。
看護婦A「おのれ、あともう少しというところで!」
看護婦B「こうなったらこいつを人質にして戦うのよ!」
言うなり身を翻す2人!
女戦闘員A&B「ギーッ!!」
白い制服が宙に舞うと、甲高い奇声と共にその下から現れたのは奇怪な装束にぴったりと身を包んだ女たちだった。
ライダー「やはり女戦闘員が化けていたのか!」
みどり「きゃーっバケモノ!!」
女戦闘員A「フフフフ、少しでも動くとこの娘の命はないわよ!」
女戦闘員B「おとなしくすることね」
ライダー「卑怯者め!」
女たちがライダーに注意を向けている隙をついて、みどりが肘掛けに付いている赤いボタンを押す。すると猛烈な白煙が車輪の下から噴出し、周囲の視界を一瞬にして奪った。
女戦闘員A「うわっ!?」
女戦闘員B「し、しまった!!」
ライダー「今だっ!」
しばしの混乱の後、煙がほどなく薄れて来ると、女戦闘員は慌てて車椅子を確認する。しかし既に獲物の姿は無かった。
女戦闘員A「ど、どこだ!?」
女戦闘員B「ちくしょうっ!」
歯噛みする2人の頭上から声が響く。
ライダー「ハハハハ、どこを見ている!」
見上げる女戦闘員は病院の屋上に勝ち誇るライダーの姿を見た。その胸には少女がしっかりと抱きかかえられている。
みどり「ライダーのおじちゃん、助けてくれてありがとう!」
ライダー「さあみどりちゃん。安全な所へ逃げるんだ」
少女を傍らに降ろすとライダーは怒りに身を震わせる!
ライダー「こんな小さな女の子を毒牙にかけようとは!絶対に許さんっ!女だからって手加減しないぞ!」
女戦闘員A「う、これでは勝ち目がないわ」
女戦闘員B「に、逃げるのよっ!」
女戦闘員がライダーに背を向け走り出す。だがそれを見逃すライダーではない。
ライダー「逃がさんぞ!とぅっ!」
屋上からの大ジャンプ、そして逃走する敵の前に見事に降り立つ。驚いてたたらを踏む女戦闘員。
女戦闘員A&B『ギーッ!?』
ライダー「さあおまえたちもここまでだ!覚悟しろ!」
ついに敵を追い詰めたライダー。
女戦闘員A「くそっ、かかれっ!!ギーッ!」
女戦闘員B「ギーッ!」
奇声を張り上げて襲いかかる女戦闘員、それに対し再び天高く跳び上がるライダー。
ライダー「とぅっ!!」
女戦闘員A「何っ!?」
女戦闘員B「ま、まさか!」
上ずった声で叫び、思わず立ちすくむ女戦闘員。その目が恐怖に見開かれる。
ライダー「悪の手先め、地獄へ落ちろ!ライダーキーック!!!」
強力な怪人をも一撃で葬り去る必殺技が炸裂する。
女戦闘員A&B『ギィイイイイイイイイイイイーッッ!!!』
耳障りな絶叫。制服にくっきりと強調された胸の谷間に左右のキックが見事にきまる。いつもと違うロケットキックスタイルなのは怪人より劣る戦闘員に対する工夫である。戦車の装甲をも打ち抜く破壊力の前には、人間の3倍程度の能力を持つ合成人間といえど一たまりもない。
女戦闘員A「あーっっ!!」
女戦闘員B「も、もうダメーっ!!」
猛烈な衝撃に吹っ飛んだ2人は折り重なって倒れ、断末魔の痙攣に四肢をわななかせる。全身の人造細胞組織が急速に壊れ、高熱を帯びながら危険な化学反応が体内で一気に進む。耐え難い苦しみに手足をばたつかせて昆虫のようにもがく女戦闘員、だがそれも束の間だった。
女戦闘員A&B「ギイィ〜〜〜〜〜〜〜〜…!!」
ボーン!!
爆発四散する女戦闘員。地面に残った残骸がめらめらと炎を上げている。怪人のそれに比べると威力はかなり弱く、2人同時の爆発にもかかわらず周囲の被害は幸いにもそれほどではないようだ。屋上から燃える炎を恐ろしげに眺めるみどり。
みどり「あの女の人たち、死ぬと爆発しちゃうなんて、やっぱり人間じゃないのね…恐い…」
そういうと少女はぶるっと身を震わせた。
元祖に比べてちょっと知名度の低いゲルショッカー戦闘員。アメコミ調のド派手な戦闘服は今振り返るとかなり奇抜で個性的。明るい色の衣装は陰影がはっきりするので黒とはまた違った魅力があります(絵だとあまり変わりませんが)。もう1つ特徴的なのは、あの際立った柄。前から見ると目立つけど後側は地味な青1色。なにか自分を強く見せるための虚仮脅しにも見え、そこが下っ端臭く、また、この鮮やかな対照が前後の印象に大きく異なった魅力を与え、とても面白いと思います。
さて、少年ゲルショッカー隊の女の子を除けば実際には登場しなかった女ゲルショッカーです。自分で描いといてなんですが、けっこう侮り難いですね、このネタ。本家に倣って顔出し&メイク(まあ、私の絵は大雑把なので表情の見えないフルマスクでは厳しいという実際的な理由もありますが…)。色合いを整えるため金髪にしました。あとは元ネタの男戦闘員と同じ、のはず…。バックルこそショッカーに比べると地味ですが、赤い幅広ベルトは悪くありません(とか言ってバックルの意匠がよく判らなかったのでかなりごまかしてますけどね)。それにしてもオールタイツってレオタードとはまた違った色気がありますね。
今回の主眼はもう1つ、「看護婦化け」。女性の変身・変わり身というのは古来より定番の仕掛けですが、中でも悪役のそれは基本的に「騙し」の手段であり、魅力の本質がより解り易く思います。特に化けるのが看護婦や尼僧など、「優しさ」「献身」を象徴するような職種の場合、正体を表した時との落差がたまりません。それを意図してかどうか、「仮面ライダー」「同V3」「イナズマンF」など、特撮系女戦闘員だけに限ってすら実例がいくつもあります。
実はゲルショッカー戦闘員には以前からだいぶ惹かれていました。資料としてかなり前に買った「仮面ライダーカード」という本に戦闘員の写真が数多く掲載されていて、ゲルショッカー戦闘員の意外な魅力に気付いたのです。おそらくそれは優れたカットが多かったせいもあるのでしょうが、「これで女戦闘員がいないのは惜しい」と思っていたところ、とある特撮系サイトの小説にゲルショッカー戦闘員(もちろん♂ですが)がライダーキックでやられて爆発する場面があり、妙にそそられたので今回の落書きにいたりました。死ぬと爆散する戦闘員は主なところではキカイダーくらいでかなり少数派ですが、必殺技をくらうと怪人同様に爆発してしまうのもアリですね。いつもは普通に倒れるだけの下っ端が過剰な暴力でより無残な死に方をするのは良いアクセントになりますし、下っ端戦闘員のショボい爆発には独特の風情があります(戦闘員爆発を見たいのなら「キカイダー01」がお薦めです。女戦闘員も一応いますが全てニセモノ。悲鳴はちゃんと女性の声で、しかも非常に好みなんですが…)。