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「姫ーっ!!」
 叫びながら石段を一気に駆け上がる騎士。祭壇の周囲を固める女神官たちが腰の短剣を抜き放って身構える。
「おのれ、神聖な儀式を邪魔させるものか!殺せっ!!」
 いっせいに襲いかかる女たち。だが相手は宮廷騎士の中でも最高の武人である。無抵抗の生贄だけを相手にしてきた彼女たちがかなう相手ではない。まるで野の草のごとく大剣に刈り取られてゆく。そして最後の1人が短剣を振りかざして突進してくる。
「う、くっ…死ねぇぇぇっ!!」
 騎士はすいと体をかわして女の足を払い、体勢を崩したところを背中から袈裟懸けに斬り降ろす。肉と一緒に背骨の断ち切られる恐ろしい音が響く。
「ぎゃあああああああああああああっっ!!!」
 長い絶叫を残し、鮮血を撒き散らしながら石段を転げ落ちると、仰向けの不自然な体勢で倒れたまま青白い燐光を発し、女神官の死体は跡形も無く消えてしまった。他の女たちも亡骸はおろか血痕すら残っていない。
「妖怪め…!」
 吐き捨てるように言うと騎士は祭壇に駆け寄り、そこに拘束されている女性の安否を確認する。
「姫!助けに参りましたぞ!」

 ここに挙げた「女神官」もそうですが、他にも例えば「オペレータ」とか「侍女」とかいった方々はやられ役としての立場が微妙です。一般的に言うと…

  1. 武装してはいるが本来は戦闘員ではない職能の敵。
  2. 一応は戦闘員であるが主任務が戦闘ではなく、ほとんど実戦経験のない職能の敵。

 要するに「いざとなれば戦うが普段は荒事に縁遠い方々」です。戦闘員と非戦闘員の中間、「準戦闘員」とでも言いましょうか。特に女性には珍しくありません。当然の事ですが非常に弱く、一般人に毛の生えた程度の戦闘力しかありません。でも戦闘の専門家でない彼女たちが拙く戦う様には一味違った魅力があります。準戦闘員だけでは戦いが成り立ちませんが、ちょっとした合間にこういうキャラを登場させるとグッと味わいが深まります。
 ちなみに1の場合の「武装」は不可欠です。丸腰の非戦闘員、例えば侍女が主を護る為に襲いかかって来た場合、それへの対応を「戦闘」とは呼び難いでしょう?率直に言ってそれは「殺戮」です。武器というのはいわば戦闘への参加証であり、言い換えれば「やられ役としての身分証、一方それを善玉側から見れば一種の「免罪符」として機能するのです。


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