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 アラン・バンデルノート神父は薄暗い通路を歩いていた。罠によって仲間たちと引き離され、地下の迷宮に落とされたのだ。
「(ここには死の匂いが満ちている)」
 エリザ姫を救うため悪名高き魔女ガルーダの城にのり込んだ王国の勇士たち。そこには数々の危険な魔物や罠、そして大勢の魔女が待ちうけていた。
「ガルーダが神をも恐れぬ自信の根拠が判ったよ。雑兵までもおまえのような魔女とは恐れ入った」
 そう言ってアランが足を止めると天井の暗闇から黒い影が音もなく舞い降りた。その若い女は肌も露わな装束に身を包み、手には曲刀を携えている。白蝋を思わせる肌の色に真紅の瞳、魔女だ。
「ウフフフ…ようこそカワイイ神父様!あたしジグラ、あなたを歓迎するわ…」
 艶然と微笑む女の顔には軽侮と、そして残忍な愉悦の色がはっきりと表われている。哀れな獲物をどう弄るか色々と思いを巡らせているのだろう。
「退屈だったのよぉ。ねぇ、遊んでぇ」
 鼻にかかった甘ったるい声を発し、淫らに身をくねらせる。
「『歓迎する』という以上もてなすのはそちらだと思うのだが?」
「アン、理屈っぽいわね!いいわ、タップリともてなしてア・ゲ・ル!」
「そうか。ではジグラ、おまえの『もてなし』とやらを受けてやろう。精一杯でお願いする。こんなどうでもいい場所をあてがわれている下っ端の所へわざわざ出向いてやったのだからな」
「な、何だって!?」
 突然ジグラの顔が憎悪に歪む。
「ハン!たかが坊主1人で調子にのるんじゃないよ!下等な人間の分際でこのジグラ様を侮辱した事をあの世で後悔するがいい!まずそのキレイな顔を焼いてやる!」
 魔女が曲刀をかざすと虚空に火の玉が現れ、アランへ向かってまっしぐらに飛ぶ。だが彼が少しも慌てず懐から取り出した十字架を掲げると炎は四散して消えた。驚愕する魔女。
「これがおまえの精一杯なのか?ずいぶんとまた貧弱だな」
 アランの十字架は主柱の下側が異様に長く、しかも先端が針の如く鋭利に研ぎ澄まされている。剣にも似たその形は一見して刺突するための武器と容易に想像される。だがジグラはその事実に重きを置かなかった。単に護身用の小細工だと思ったのである。それよりも自分の魔法をあっさりと退けられた事で彼女は完全に血が上ってしまった。
「おのれ!それならバラバラに切り刻んでやるわ!」
 相手は僧侶。武闘は苦手だと思った。猫が鼠にするようにアランを弄べるはずだった。刃には強力な麻痺と催淫の効果がある毒が塗ってある。かすり傷1つでも付けば相手はもう意のままだ。あとはじっくりと楽しめばよい。素早い動作で斬りかかるその姿は山猫の獰猛さを思わせた。2人の間合いが3メートルを切った時、アランの体が動いた。たった一呼吸。ジグラに倍する一閃の歩法で懐に飛び込むと鉄拳が魔女の腹を一撃した。
「ゲフッ!?」
 思わず前のめりになるジグラの背中へ今度は握り合わせた両の拳をハンマーのように振り下ろす。
「グェ!!」
 アランに向かって深くおじぎをした姿勢になる魔女。その細い腰にアランは両腕を回し、思いきり締め上げる。滑らかで冷やりとした魔女の肌特有の感触。次の一瞬、彼は固い石の床を思いきり蹴る。漆黒の僧衣が中空に大きな弧を描き反対側に膝から着地、そのまま逆さまに抱えたジグラの身体を回転のエネルギーで頭から思いきり床に叩きつける。
「ガッ!!」
 たて続けに襲う大打撃に行動力を喪失した魔女の身体は、なすがままに両腕を膝で押さえつけられ股間を左手で支えられ、天地逆に固定される。アランは最後の仕上げにとりかかった。十字架を持った右手でジグラの腰を背中から押し、腹を突き出させ、固定をより強固にすると右手の十字架を主柱で掴み、狙いを定めてその切っ先を会陰に突き立てた。
 プシュル。
「あぅ!」
 ジグラの目が大きく見開かれる。必死に逃れ様とするが身体の自由が利かない。ただピクピクと痙攣するだけである。
「魔女よ、汝の重き罪を嘆け…」
「き、キサマまさか魔女狩…」
 主柱を挟むように十字架の横木へ人差し指と中指をかけるとアランは一気に力を込める。
 ズビュ…。
「!!…」
 声にならない絶叫。鋭い切っ先はジグラの体内に深く侵入し、遂に魔女の急所である子宮に達した。全身がピクンピクンと大きく震え、つま先が跳ね上がる。小刻みに震えながら身体を弓なりに突っ張る。しばしの間をおいて女はガックリと脱力する。それが魔女ジグラの最期だった。
「光栄に思え。本来ならおまえのごとき程度の低い魔女には使わない大技だ」
 驚愕のまま表情の凍りついたジグラが答えるはずもない。ゆっくりと十字架を引き抜くアラン。不思議な事に血は1滴も着いていない。魔女の亡骸を床に横たえると彼は立ち上がる。
「さて、生贄の祭壇はどっちだ?ともかく地上へ上がらなければ…」
 固い足音が遠ざかって行く。後には両足をW字に広げた無様な死体が残るばかりである。

 本当はコレ、魔女じゃなくってダークエルフの予定だったんです。耳が尖っているのはそのため。でも作業の途中で「白い肌」が描きたくなって…(笑)。
 またもや急所攻撃。今度は「必殺シリーズ風」です(ファンの人怒らないで。私もファンです)。
 CG塗りも少しずつ解って来て、最初の絵に比べればキレイな仕上りになっていると自分では思っています。でもビザールファッションの質感がすぐラバーになってしまう(泣)。エナメルはまだしもレザーってどう表現するんでしょう?


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