「…ねぇ先生、いったいどこまで行くの?もうずいぶんみんなと離れちゃったよ」
「大丈夫よ、もう少しだから。帰る時間にはちゃんと戻れるわ」
少年の問いに振り返ると、女はにっこり笑って答えた。その顔を見ると些細な疑問は霧消し、少年は思わず微笑み返してしまう。
「わかったよ。僕、田中先生といっしょに探検できるなんてうれしいな」
「いい子ね。先生、守君だけ秘密の場所に連れてってあげようと思うのよ」
「『ひみつのばしょ』?」
「そう。だからあと少し頑張ってね」
そう言いながら女は守の頭を優しく撫でた。
「うん!先生早く行こっ!」
憧れの先生と2人きりで守はすっかり有頂天だった。今日は楽しい遠足。バスに乗って森林公園にやって来ているのだ。目に痛いほど青空が冴え渡り、絶好の行楽日和である。自由時間の最中、担任の女教師である田中明子に守は声をかけられた。
「ねぇ守君。あなたにちょっと用があるの。先生と一緒に来て」
以前からこの美人教師が大好きだった少年は何のためらいも無くついて行った。こうして今、女教師田中と2人で守少年は山道を歩いているのだった。
守と田中が辿った道をずっと遡った場所にある広場。公園の休憩場だ。丸太を組んだ遊具や水遊びのできる池などがある。遠足に来た子供たちは思い思いに輪を作って遊んだり喋ったりと忙しい。
「ねぇ、ちょっといいかしら?」
いきなり声をかけられて驚いた子供たちが一斉に見上げる。
「あ、そ、そのう、藤沢守君は何処にいるのかしら?」
たくさんのつぶらな瞳に見つめられ、うろたえているのは高校生くらいの娘だった。
「マモルくんなら田中先生といっしょにどっか行っちゃったけど…お姉ちゃん、だれ?」
少女の応えに娘の表情が急変する。
「遅かった!」
謎の娘は答えた少女の両肩に手をかける。
「どこ!何処に行ったの!?」
年上の人間に詰問されて少女の顔がみるみると崩れる。娘がしまったと気付いたときにはもう遅かった。
「ウ…ヒック…ゥゥエエエエエン…」
「あ…ちょ、ちょっと、お願いだから泣かないで」
うろたえる娘に周囲の少年たちが詰め寄る。
「ミカちゃんになにするんだ!」
「こいつアヤシイよ。先生を呼ぼうよ!」
「お、お姉ちゃんは怪しくないのよ!本当よ!」
見知らぬお姉さんが子供の遠足に紛れ込んで女の子を泣かしていては、どう見ても怪しい。近くにいた男性教師が騒ぎに気付いてやって来る。
「キミ、いったい何をしているんだ!?」
「あ!鈴木先生!こいつマモルのことを狙ってる悪いヤツなんだ!」
「なんだって!?」
若い男性教師の表情がこわばる。
「君はいったい誰だ!?藤沢博士のご子息に何の用があるんだ!?」
「その守君がさらわれたんです!早く助けないと手遅れになるわ!」
「さらわれたって、誰に!?バカな事をいいたまえ!」
「偽教師にです!その子に訊いてください!」
言われてみると、眼鏡をかけた利発な少年の姿が何処にも見えない。相手の真剣な様子もあり半信半疑ながらも泣いていた少女に尋ねてみる。
「桜井、藤沢は何処へいったんだ?」
「…田中先生といっしょにあっちの方に行っちゃった」
まだ少し泣きじゃくりながら少女の指差した先には、森の奥に伸びる脇道の入り口があった。
「ほら言ったでしょう!?早く追わないと!」
「君は田中先生が偽者だと言うのか!?そんなバカな!」
「議論してる暇はないわ!今は一刻も早く守君を探さなきゃ!」
「し、しかし君は何者なんだ!?なぜ守君の事を知ってる?ともかく事情を説明してもらうぞ!」
男は娘の腕を掴む。そこへ1人の中年教師が駆けてくる。
「おーい!鈴木先生!」
「あ、丸山先生いいところへ!藤沢守君の姿が見えないんです。どうも田中先生が何処かに連れていったみたいなんですが…」
フウフウと息を切らしている小太りの中年男は目を丸くして驚く。
「田中先生が!?」
「どうしたんです?他にも何かあったんですか!?」
「そ、それがな、いま警察から連絡があって、その田中先生が死体で発見されたって言うんだ!もう何が何やら訳がわからんよ!」
「ええっ!?それじゃ本当に…」
鈴木の注意がそれた一瞬を見逃さずに腕を振り解くと謎の娘は大きく跳躍した。宙返りをして10メートル以上は離れた場所へ鮮やかに着地する。呆然と見つめる一同。
「私、守君を助けに行きます!」
「ま、待ってくれ!君はいったい!?」
娘はにっこりと微笑む。
「私の名前は神堂瀬理香、『正義の味方』です!」
凛とした声でそう言うと風のように森の中へ駆け去り、少女の姿は瞬く間に見えなくなった。
守は田中明子に連れられてもうずいぶん遠くまで来ていた。公園の管理者が月1回通る他は全く人気の無い道である。「道」とはいっても木々や下生えの間をぬう踏み固められた細い地面に過ぎない。さすがに「これは変だ」と守の心に再び疑念が沸き起こって来たが、他ならぬ田中先生が相手だったので「きっと大丈夫さ!」とそれを打ち消した。けれども先刻から田中は押し黙ったままでいつもとは様子が違う。せっかく2人きりなのだからいっぱい話をしたいのだが、なんとなく声をかけづらい雰囲気である。
「……………」
ふと「この人は本当に田中先生なのだろうか?」という疑問が守の心をかすめる。もしかしたら他の誰かが先生に成りすましているのではなかろうか?しかし、何処をどう見ても本人に間違いない。雰囲気はいつもと違うが、それは今日が「遠足」と言う特別な日だからなのだろうと守は自分を納得させる。余計なことを考えていると置いて行かれそうになってしまう。
不意に視界が開けると広い草原に出た。吹き抜ける風が肌に心地よい。田中は立ち止まって背後を確認する。
「フッ、ここまでくればもう大丈夫ね…」
「?、何が大丈夫なの?」
「なんでもないわ。さあ、先を急ぎましょ」
やはり何か変だ。人間の本質的な識別に長けた子供は外見に隠された正体を半ば見破っていた。再び歩き始めた田中の後姿を守はじっと見つめる。
「あっ!!」
その足元を見た少年はぎょっとして叫び声を上げた。草原に咲いている可憐な野の花が田中によって踏み潰されてゆくのだ。
以前、友達と鬼ごっこをしていたとき、守は田中に呼び止められたことがある。特に悪い事をしている訳でもないので何故だろうと怪訝な面持ちの守に対して彼女は地面を指差した。そこには名も知らぬ雑草が小さな花をたくさん咲かせていた。守はすぐに悟った。
「守君。草花はね、種から芽を出して長い間いっしょうけんめい頑張ってようやく綺麗に咲くことができるのよ。元気なのはとても良い事だけど、小さな花にも優しくしてあげてね」
その深い優しさに守はとても感動し彼女の事をますます好きになった。ところが目の前で田中明子を名乗る女は咲いている花を平気で踏みにじっているのだ。
ふと気付いて後を振り返ると守がじっと立ったままついて来ない。
「何してるの!早く来なさい!」
女の声には怒気が含まれている。だが守は一歩も動こうとせず、田中をじっと睨み返したままだ。様子のおかしいことに田中が気付いた時、守が口を開いた。
「おまえは田中先生じゃない!」
少年の言葉に女は狼狽する。
「な、何を言ってるの守君。バカな事言ってないで先生の言う事をきいてちょうだい」
守は女の足元をぴたりと指差して言い放つ。
「先生はキレイな花を踏みつけたりしない!」
ハッとして足元を見る女。
「あ、ああ、ごめんなさい!ちょっと気がつかなかったの。さあ!そんな事はいいから早くこっちにいらっしゃい!」
「いやだ!」
少年の瞳には動かしがたい決意の光が宿っていた。もはやここから一歩も動きはしないだろう。
「…フ、フフフフフ…アハハハハハハ…!!」
女は突然笑い出す。悪意のこもったその声は守の心に恐怖を呼び起こした。
「子供と思って甘く見ていたようね!ハァァァァ…!!」
女が気合いを入れるとその姿が揺らめく。一瞬の後、そこには全くの別人が立っていた。いや、正確に言えば顔かたちはそっくり同じだが、他が全て違っていた。まず女は普通の人間ではなかった。皮膚は青白く顔には赤や黒で恐ろしい隈取が施されている。ピッタリと身に着けたスーツは体操の女子選手が着るレオタードのようだ。黒と緑に彩られたその姿は少年の目に蛇かトカゲのように映った。
「うわぁっ!!」
「藤沢博士の一人息子、藤沢守。おまえの身は我々メデューサが預かった!さあ、一緒に来るのよ!
瀬理香は森の中を疾走していた。100メートルを9秒以内で走り抜けるその速度と走破性は人間を遥かに超えている。そうしている間にも彼女の全知覚は周囲に細心の注意を払っていた。鋭敏な聴覚が何かを捉え、瀬理香は瞬時に立ち止まり身構える。すると前方の樹上から2つの人影が飛び降りてきた。守を襲ったニセ田中と同じ格好の女たちだ。
「シャーッ!」
蛇のような唸り声を上げて2人の女が瀬理香を威嚇する。彼女は相手をきっと睨み返す。
「メデューサの蛇従兵!やっぱりあなたたちの仕業だったのね!」
「神堂瀬理香!邪魔はさせない、死ねっ!」
敵は2人同時に襲いかかってきた。1人は短剣、もう1人は金属製の短い棍棒で武装している。目にも止まらぬ素早い動きで繰り出された攻撃は空を切った。敵の頭上を宙返りで飛び越えると、その背後に着地、そして振り向きざま棍棒を持った方に拳をお見舞いする。ひるんだところですかさず相手の腕を取り、そのままもみ合いになる。
「くっ!」
歯を食いしばって奮闘する敵に対し、瀬理香の表情は平静だ。だがその腕力は異常に強く「固い」。まるで油圧にでも駆動されているようだ。
巧みに相手を羽交い締めにして瀬理香が自由を奪ったところで、もう1人の女が鋭い突きを入れてくる。これを察した瀬理香は捕えている敵の体を盾にしてこれをかわす。
「う゛ぅ…!!」
仲間の剣に胸を刺し貫かれた女が呻き声を上げて倒れる。全身を蝕む死の苦痛に悶え苦しむ蛇従兵。その身体が緑色の不気味な光を発し始める。
「あっ!、あっっ!、あぁぁぁ…」
最後に四肢を思いきり突っ張った後、女はガクリと脱力する。女が動かなくなると怪光は全身を包み、その組織はみるみるうちに緑色のドロドロした液体となって溶けてゆく。秘密を守るため、死ぬと人造細胞が自壊して痕跡を残さないようにする仕組みなのだ。
「しまった!」
動揺したもう1人の隙を突き、その手を瀬理香が思いきり蹴り上げる。持っていた剣が宙高く舞いあがり、落ちて来て瀬理香の手に収まる。その切っ先はすくさま敵の胸元に突き付けられた。
「うっ…!」
少しでも動けば仲間の後を追うことになるのは明らかだ。
「さあ!守君は何処にいるの!」
厳しく問われた女はしかし不敵に笑みを浮かべる。
「フフフ…、もう無駄よ。今ごろはジャコウ様が藤沢博士の息子を捕えているはずだわ」
「なんですって!?ジャコウってまさか…!!」
喋っている途中、とつぜん持っていた剣を頭上後へ向かって投げつける瀬理香。
「ア゛ァーッ!!」
今まさに短剣を振りかざして飛び降りようとしていた女の腹に瀬理香の投げた同じ武器が深々と突き刺さっている。もう1人潜んでいたのだ。女は樹上から落下し、仰向けに地面へ叩きつけられた。
「くそっ!」
仲間の奇襲が失敗すると、刃の縛めを解かれた女が倒された仲間の棍棒を拾う。女が棍棒を構え柄をひねると先端に開いた穴から鋭い突起が飛び出す。その動きを既に察知していた瀬理香は素早く身構える。
「シャァァァッ!!」
2人は激しく打ち合い、2度、3度の攻防の末、セリカの一撃が敵の腹にめりこむ。
「げぅっ!」
苦痛に緩んだ敵の手から棍棒を奪い、その先端を相手の胸に向かって思いきり突き込む。
「アアウッ!あああぁぁぁぁ…」
凶器を引き抜くと、その穴から大量の血がドロリと流れ出す。そのまま仰向けに倒れた場所は、さっき落ちてきた仲間のすぐ傍らだった。並んで溶解してゆく女たちの肉体をじっと見下ろす瀬理香。もう数え切れないほど見ているが、嫌な光景だ。
蛇従兵は悪の秘密結社「メデューサ」の戦闘員である。人造細胞によって造られた合成人間だ。その戦闘能力は兵士として訓練された成人男性を大きく上回る。そんな敵をあっという間に3人も倒した瀬理香は武道の達人なのだろうか?
「”ジャコウ”…間違い無く『鬼女羅(きめら)』ね…このまま道なりに追ってたら手遅れになるわ…」
彼女は耳をすました。森の中を響き渡る音響が更紗模様のように分解され、一つ一つが明瞭に聞こえてくる。数百に分類された音源の中で人の声に注目し、ほかの音響を排除する。
『くそっ!まだ追いつかない!いったい何処まで行ったんだ!』
『ハァハァ…鈴木先生、もう無理だ!…け、警察が来るのを待とう…』
どうやらあの教師たちも後を追ってきているようだ。むろん危険だが引き返して止めている暇は無い。瀬理香はもっと高い周波数帯に神経を集中する。
『助けて!パパーッ!先生!』
「コレだっ!!」
周囲の地形情報を元に音場解析を行うと、1秒もかからずに直線で1キロほど離れた場所が特定される。
「今行くわ守君!」
瀬理香の体が天高く跳んだ。
「わかったぞ!パパの言ってた『悪い奴ら』っておまえたちの事だな!パパの研究を狙ってるんだろう!そんな事させるもんか!」
「フフフ、元気のいいボウヤだこと。そうさ、おまえの父親が研究している光子力エネルギーが我々の目的。おまえを人質にすれば博士も素直に研究成果を渡すだろう。さあ、痛い目にあいたくなければ黙って一緒に来るのよ!」
少年は答えず、ただ相手を真っ直ぐに見据え、絞り出すような声で尋ねる。
「本物の、田中先生は?」
女戦闘員は口の端を歪めて笑った。
「フッ、決まってるじゃないの」
少年の顔が泣きそうに歪む。
「ちくしょう!」
「ほら!おまえも死にたくなかったらさっさと来るんだよ!」
蛇従兵が守に近づこうとしたその時…。
「近寄るなっ!!」
少年の手には金属製の物体が握られていた。それは鈍く銀色の光沢を放つパチンコだった。守は大の得意で、それでよくイタズラをしては母親に叱られていた。友達の間では「射撃王」の異名を取っている。だがこれは彼がいつも使っている物ではない。身の危険が迫ったときに最後の手段として父親から渡されていたのだ。本体はチタニウム合金でできており、玉も父親の「特別製」だ。
「そんなオモチャで何をするつもり?面倒をかけないでおとなしくしな!」
更に女が近寄ろうとすると守は驚くほどの早業で弾をつがえた。直径2センチほどの黒い弾だ。特殊ゴム製のつるを力いっぱい引き絞る。
「よくも…よくも先生をっ!!」
女は瞬時に大きく後へ跳ぶ。
どぅん!
青白い閃光に続き、思いもかけず重い着弾音。
木の枝に跳び上がった女が思わず目をむく。自分のいた位置の地面に小さなクレーターができていたのだ。この威力はオモチャのそれではない。相手がこんな武器を持っているとは全く予想外だった。そしてこの動揺が彼女にとって命取りとなった。高い位置の彼女は守にとって格好の的だったのである。学校の射撃王はこの隙を見逃さなかった。
「田中先生のカタキっ!!」
「ヒィッ!!」
放たれた第2射は見事に命中した。弾丸がスーツの股間を突き破り、女の秘奥にめりこむ。膣口の裂ける激痛。遅れて熱い塊に身体の芯を焼かれるような感覚。
「う…っく…」
腰をくねらせて懸命にこらえるが、遂によろめいて足を踏み外す。
「ア、アアーっっ!!」
どさりと仰向けに地面へ落下した女戦闘員は苦しみに五体をよじる。着弾部位が柔らかかったためすぐには爆発しなかったのだ。取り出そうと戦闘服の破れた股間に指を指し入れるが、弾丸は遥か深奥、子宮口の辺りにまで侵入しており容易な事では届かない。
「くそっ、くそうっ、こんなものっっ!!」
必死の表情の蛇従兵。もはや守の事など眼中にない。歯を食いしばって懸命に指を動かす。秘部をかきむしる指が赤く濡れる。見ようによってはオナニーにも見える痴態だが、少年にとっては身も凍る修羅場だ。たまらなくなった守は思わず目を背けてしまう。
「くっ…と、取れない…いやっ、だ、ダメっ!誰か!…」
死を込められた異物が体内で急速に熱くなってくるのを女戦闘員は感じた。生命の危機を目前にした極度の焦燥に彼女は何故か強烈な官能の昂ぶりを覚える。「自分はもう助からない」という絶望と「死にたくない!」という思いがせめぎ合い、恐慌と快感のごちゃ混ぜが意識を塗り潰してゆく中で、密着した戦闘服に包まれた肉体が頂点に向かって一気に燃え上がる。
「うっ!…あ…あ!、ジャ、ジャコウ様ーっっ!!」
絶叫しながら女が仰け反って腰を浮かせた時、遂に炸薬が反応を起こした。
バスッ!
鋭い破裂音と共に女陰の割れ目から青白い炎が噴き出す。爆発は女戦闘員の無防備な内臓組織に致命的な損害を与えた。もはや苦痛とも快感とも定かならぬ衝撃となって、女の命と淫昂にそれは最後のとどめを刺した。
「あ゛あ゛ぁぁぁーっっ!!!」
断末魔の悲鳴が守の胸に突き刺さる。だがそれはこの女戦闘員が悪の手先として培養槽から産まれ出でてから最初で最後に発した絶頂の叫びでもあった。死にかけた昆虫のように四肢をバタバタと振りもがき、ドロリとした緑色の液体を股間からおびただしく溢れさせる。もし守がそれを見ていたら悪夢に一生うなされるような光景だ。しかしそれもすぐに弱々しく衰え、最後に全身を小刻みに震わせると一際大量の体液がどぼりと吹き出す。それを境に蛇従兵の身体がぐたりと脱力し、微光に包まれる。恐る恐る守が目を向けると、自分の倒した敵がドロドロと溶けてゆくところだった。その有様を見ているうちに、なんとも言えない罪悪感が込み上げ、少年の目に涙が滲む。
だがその時、彼の身には更なる脅威が迫っていたのである。
つづく