くの一失神勝負

第一部


 うららかな初春の街道も、村はずれにさしかかれば人影は全く途絶える。
 そんな中を一人、旅姿の武家娘とおぼしき女が道を急いでいる。年のころは二十歳そこそこだろうか、供もつけず、余程の事情がありそうである。

 峠にさしかかろうとする所で、武家娘の足がとまる。いつの間にか前方に一人、村娘のような女がたたずんで、武家娘を見つめている。武家娘は、しばし、行く手を阻むように立つ女と向き合っていたが、ややあって口を開く。
「何か私に用でも?」
 女は微笑んで返す。
「小夜どの、と、お見受け致す」
 武家娘は、自分の名を指されても  顔色一つかわらず。
「用があるなら、まずご自分を名のられませ」
 女はそれには答えず、
「その懐中の書状をお渡しいただきたく。おとなしく差し出せば手荒な真似は致しませぬゆえ」
 と言い放つ。小夜の方も動じない。
「欲しくば、とってみよ。但し、そなたらも、その手荒とやらの洗礼を受けることになるかもしれませぬぞ」

「おやおや大したお方。私以外の気配も感じているとは。ならば、話は早うござる」
 村娘は着物を羽衣のように脱ぎ捨てる。一瞬にして村娘は全裸姿に変わっていた。いや、 厳密には手足の黒いきゃはんのみ身につけていると言えるかもしれない。現代風に言えば アームウォーマー・レッグウォーマーというところである。そのふくよかな乳房、くびれた腰、張り出した尻、整えられた恥毛におおわれた秘所など、全てが惜しげもなくあらわになっていた。

「それが、そなたらの正体なのか、忍びじゃな?」
 いきなりの裸体をみせつけられても小夜はあくまで冷静を保っている。
「いかにも。無駄な装束をまとわず、が、われらの身上。また、身に寸鉄を帯びず、決して人を傷つけたりも致しませぬ。但し…」
「但し?」
「気絶していただくことはござれば、それを手荒と申したまで」
 忍びの答えに、小夜は少しく柔和な表情に転じているように見えた。
「おもしろい。では、どちらが気絶するか、勝負ね」
「強がりは申されるな」
「いいえ、存分に参られよ」
 小夜はむしろ楽しんでいるように声が弾んでいる。
 「では参る」
 女忍は、かき消すように姿が見えなくなる。無論、小夜を遠巻きに囲む多くの気配は残ったままである。一瞬の後、小夜めがけて飛び降りてくる4つの影…
 その一つが小夜の頭上に迫ったその時――
 ドフッ
「うぐっ」
 短い呻き声があがる。

 小夜に迫った女忍達は、その直前で、彼女の姿が揺らいだように見えた。が、所詮一介の武家娘、容易に捕らえられようと伸ばした腕が次々空をきっている間、仲間の一人が、その下腹部に拳を突きたてられ、気を失うさまを見ることはできなかった。もし、その一閃を垣間みることができれば、下腹部に突き入れられた拳が子宮近くの性感帯をも鋭く刺激し、瞬時にして訪れる絶頂の中で仲間が気絶するさまを、呻きに続いて秘所から愛液がほとばしるさまを見てとれた筈であった。閃光のような動きの中でそれが小夜の呻き声とばかり確信していた残りの女忍達は、倒れ伏し失神しているのが仲間と気づいた瞬間、ほんの僅かだが遅れをとっている。既に一人の脇に目にもとまらぬ早業で張り付いた小夜の拳が、秒速の勢いで相手の下腹部に打ち込まれる。
 ――ドズッ
「あううっッ」
 遠ざかっていく意識の中でしかし、女忍は当身で受けた苦痛をはるかに凌ぐ、至福の絶頂感を味わっていた。言葉にならない心の叫びが身体中にあふれでる。
(はあぁぁ…い、い…イクゥゥゥゥゥ!!!!…)
 崩れ落ちていく女忍のその口は力なく半開きになったまま、声もない。その分、いや、それを補って余りある大量の愛液が秘所から噴出し、女忍の激情を物語る。仰向きに倒れた女忍の下肢部とそのまわりの地面は、みるみる愛液の泉と化し、失禁と見まごうほど。しかし、芳しいその泉はまぎれもなく、女だけに与えられる美しい営みの産物であった。

 ここに至って、残った二人の女忍は、状況を理解する。もはや捕らえる行為でなく、気絶させるべきとの認識で一致した二人が、小夜に向かって突進する。小夜の鳩尾めがけて繰り出された二人の拳は、しかしその目標に到達することはなかった。間際で瞬時にかわした小夜の身体の残像を通過していく間、二人の腹部は全く無防備となる。小夜は左右の拳をそれぞれの相手に同時に突き入れる。
 ――ガスゥッ
「んうっッ」
 ドブッ
「ふうう−っ!」
 二人は、先に倒れた仲間と同じく、倒れ伏したその場で芳醇な泉を生み出していった。

 休む間もなく幾つもの煙玉が投げ込まれ、四人の影が小夜めがけて飛び込んでいく。 煙幕の中でうっすら浮かぶ五つの人影はほんの一時交錯していたが次の瞬間――
 ドズゥッ
「ふぐうっッ」
 …ズンッ
「うぅっ」
 …ドボォッ
「あぐっッ!」
 …ドスゥッ
「ぐふうっ」
 …四つの呻き声が次々にあがり、ほどなく煙が晴れわたるにつれ、女忍たちがあっけなく気絶しているさまが見えてくる。その中に小夜は一人、何事もなかったかのようにたたずんでいる。

「ただものではないな、何者じゃ!」
 遠く周囲から、張り詰めた声がかかる。声の主は最初に小夜に相対した村娘のものに違いない。
「そなたらも申していたであろう、わたしは小夜と申す」
「忍びの心得ありとみたが如何に?」
 女忍の重ねての問いに小夜は笑みを浮かべながら答える
「さあ、どうであろ。気の済むまで確かめてごらんあれ」
 その言葉に、周囲の木立から三名の女忍が姿を現す。あの村娘が小夜の前方に、そして背後に二人…
「申し遅れたが、わたしは桔梗と申す者。もはや手加減はいたしませぬぞ」
「先刻承知。勝負ですもの」
 と小夜が答える合間にも、三人の女忍は、じりじりとその間合いをつめていく…凍りつくような緊張がゆるやかに漂いはじめたその時―――
 いきなり背後の二人が小夜に飛びかかり、狙いすました拳を突きだす。と同時に桔梗と答えた女が今までの女忍達よりはるかに俊敏な動きと技で、小夜の鳩尾めがけ飛び込んでいる。
 背後からの攻めをかわす分、不自由な動きになる標的が、自在に繰り出される手練れの突きを食らうのは火を見るより明らかと思われた。

 その瞬間――二人に背を向けたままの小夜の姿がふっとかすむ。分身の術のような光速の動きなのか、二人には間違いなく小夜が頭上に飛んだと思われた。残像を追いかけつつも、もしやと思い、その周囲にもくまなく、そして素早く突き出される二つの拳。しかしその実、小夜は横に飛び、1分の無駄もない流麗な身ごなしで二人の背後をとっていたのである
 ――ドボォォッ!
「ふぐぅぅッ!」
 …やや横からだったのだろうか、一人の下腹部に小夜の左拳が痛烈にめりこんでいた。 その刹那、小夜の鳩尾はがら空き――桔梗の強烈な攻めをしのぐ受け身もかなわぬ筈である。
 ドズゥッ!
「ううっッ」――
「やったわ!」
 桔梗が会心の笑みを浮かべたのも束の間、彼女の突き入れた拳が仲間の鳩尾を深く圧迫しているさまを目の当たりにする。自らの受け身が間に合わぬと見切っている小夜が、もう一人の女忍を押し出し、桔梗の拳の前に差し出したのである。
「うぬッ、もう少しのところで」

 桔梗が誤って仲間を倒す間、既に小夜は体勢を取り戻している。が、桔梗の凄まじい攻めは続き、巨大な圧力となって小夜を追い詰めようとしていた。次々繰り出される高速の拳に、防戦一方の小夜…しかし小夜の表情には微塵のあせりもない。常人ではそれこそ数秒ともたない、究極の消耗戦が数分も続いたころ、桔梗の息づかいに僅かな乱れが現れる。その一瞬が全てだった。万全の構えで攻め来る桔梗の、ほんの僅かな隙が見えたその時――
 小夜の拳は、桔梗の拳の嵐をかいくぐり、下方から突入していく。小夜の下腹部突きが早いか、桔梗の鳩尾突きが早いか、まさに同時に見えていたが――
 ドズッ!
「あぐうっッ!」
 鋭い呻き声はしかし、桔梗のものだった。桔梗の拳は、小夜の鳩尾の寸前で止まり、それ以上突き出されることはなかったのである。

(そ…ん…な…)
 声にならない思いがこみあげるのも束の間、それも瞬時にして押し寄せる絶頂のうねりに包み込まれていく…小夜は倒れかかろうとする桔梗の身体を抱きとめ、耳元でささやく――
「いい勝負だったわ、桔梗どの」
 無論、気絶している桔梗には伝わるべくもない、が小夜としては、激戦のあとを癒すなにか一言をかけてやりたかったのであろう。そのまま、優しく地に横たえると、小夜は、自分の着物のそこかしこに桔梗の秘所から溢れ出た愛液が付着しているのに気づく。しばし腰をかがめて桔梗の姿を見ていた小夜は、ゆっくりと自らの顔を相手の顔に近づける。やがて小夜の唇は、少しあいたままの桔梗の口元に柔らかに重なりあう。
「ん…んん…」
 小夜は頬を少し紅潮させながらかすかな声をたてる。
(少しだけ…愛してみたい…)
 この先を急がねば、と思いつつ、小夜は片方の手のひらを桔梗の豊かな乳房にそっと添える。もう一方の手は、桔梗の秘所に向かい、涌き出る泉のほとりで大きくなっている突起を三本の指でやさしく愛撫する。小夜の顔は桔梗の唇から離れ、ゆっくりと乳房をもみしだいている手のひらへやってくると、おもむろにその乳首を口に含んだ。身体が深い気絶の闇に立ち入ってはいても、両の乳首は敏感に反応し、はちきれんばかりに成長する。小夜は舌を絡めながら、時折激しく乳房をもみしだき、勢いよくその乳首を吸う。細かく打ち震える桔梗の身体は、幾度となく腰が持ち上がり、アーチのようにくねらせている。淫靡な動きが際限なく続くとおもわれたその時――
 ピュウゥ!
 稚児を授かる歓喜にもまさる至上の悦楽に、桔梗の身体はもう一段の封印を解き、ついに豊かな乳汁をほとばしらせたのである。突然放たれた幾筋もの乳汁に上半身を濡らしながらも、小夜は何度か、桔梗の乳を口に含み、ゆっくりと飲み味わった。ひとしきりの 所作がおわり、やがて、立ちあがった小夜は足元に眠っている桔梗に向けて穏やかに語りかける。
「おいしかったわ、ごちそうさま…今度は無粋な勝負をやめて会いましょうね…いつか、 わたしの乳もごちそうしてあげたいもの…」

 見渡せば、11人のくの一達がそれぞれ四肢を投げ出し倒れている。もはや周囲に一切の気配はなかった。小夜はそのうち一人の女忍の傍らにしゃがみこむ。桔梗に誤って当て落とされた女である。小夜は女忍の鳩尾あたりに、そっと手のひらをあて軽くさすると、気絶している女に向かってつぶやく。
「少し、浅いわね…みんな半日ほど眠っていてもらいたいの。悪いけどそなたの腹をもう一度突かせてもらうわ…許してね」
 小夜は女の胸にあてていた手のひらを下腹部に持っていくと、そこで拳を作る。少し引いたのち、他のくの一たちにも食らわせた強烈な突きがめりこむ
 ――ズボォッッ!
「んうぅっッ」
 …女忍はより深い気絶の沼に沈みこんでいく…無論、この女忍にも愛液のほとばしりは確実に訪れる…

 小夜は女忍の下腹部から拳を抜くと立ちあがって、再び倒れているくの一達を見やった。小夜には大方の察しはついている…この者たちは密書強奪をたくらむ一派に命ぜられた甲賀くの一衆…となると、このまま甲賀の女忍たちがあきらめるとは思えなかった。この先、新手が攻め寄せてくることも充分考えられよう…まずは、一幕の勝負がおわったのだ…
「そなたたちに、密書を渡すわけには参りませぬ…明朝には目が覚めるはずゆえ…今はいい夢でも見て、ゆっくりお休みなされ」
 静かに語りかけた小夜は、11人の女忍たちが放つ愛液芳香の園をあとに、改めて日の傾きつつある街道を急ぐのであった。

(第一部 完)

第二部


 夕闇迫る街道をただ一人急ぐ小夜…目指す大川の船着場まで近づいてきてはいるが、この先、山を越えさらに扇状に横たわる広大な田畑を抜ける道のりは、あと幾分かの時を求めるであろう、日暮れまでに船着場に着くことは不可能といえた。さりとて、山あいの緑が幾重にもわたり一帯を覆い尽くしているこの界隈には、宿場、茶屋はおろか、百姓家の一つも見ることができない。明日、明け方の舟に乗るまで、どこか廃屋にでもまぎれ、多少の休息をとろうか…今日一日の長旅をまっとうしてきた小夜が、そう思うのも無理はなかった。そして翌朝の舟に乗ってしまえば、追っ手も追いつくことかなわず、また、他の旅人たちが大勢乗り合わせるなかで、滅多な仕掛けもできないのでは…相手が忍びとなれば気を抜くことは出来ないものの、小夜は一縷の希望を捨てきれないでいた。舟が無事、領内の港に着けば、そこからは城下まで僅かな道であり、小夜のつとめもようやく果たせるのであった。

 周囲は鬱蒼とした木々や身の丈以上もある草木がそこかしこに繁茂し、どこまでも続きそうな闇の帳が連なっている。人っ子一人いない深緑の帳の中、黙々と歩を進める小夜の脳裏にはふと、一刻ほど前の桔梗たちとの事が思い起こされていた。殆ど全裸姿だった11人のくの一たち…勝負だった以上、気絶させることも止む終えない仕儀ではあった、が、小夜は胸中に何か、甘酸っぱい思いを抱き続けている。かれらはみな、小夜とほぼ同じ年恰好に相違なく、肉体が満開の花の如く成長はしていても、どこか幼さの残る顔立ちをしていた。可憐な表情のひとつひとつは忍びであること以前に、それぞれの情の発露を、 女としての淡い心を、投げかけているようにも見えた…
(女どうしだからこそ、わかりあえる…)
(もっと、ひとりひとりに深く関わっていきたい、交わっていきたい…)
 小夜の思いはつのっていく。しかし、その隘路には別の感情が頭をもたげることもある。桔梗とのひとときが思い出されるにつけ、小夜の妄想が広がっていき、止め処ない性の饗宴を願うのである。小夜はその都度、懸命に打ち消そうとする。
(この殺伐とした時代に、かれらは、人を傷つけず、という志を貫いているのだ、その気持ちに応えたいだけなのよ…)
 と、自らに言い聞かせるように放つ心の響き。小夜とて、今まで一人として、傷つけたことはない。いつぞや白刃をもって襲いかかってきた野武士の一党相手ですら、見事な素手のさばきでかれらの得物を叩き落し、味方の捕り方に引き渡したほどであった。身一つの勝負にのぞむということは、それなりの技量と判断が求められるのであり、甲賀くの一衆もそうした技と志を踏まえ、自分と同じ立ち位置にいてくれているのだ、と小夜は思う。もっとも以前から、女忍群はその流派を問わずみな、寸鉄帯びぬ全裸姿で立ち回り、人を傷つけぬ働きに終始していたことをうすうす感じ取ってはいたのだが…

 くの一たちへの揺れる思いを胸にどれだけ歩いただろうか、ふと街道から少しはずれた木立の際に、小さな廃屋を見出す。近づいてみると、あばら家ではあるが寸時の小休止には十分な構えである。このあたりの百姓が以前道具置き場として使っていたのであろう、錆び付いた農具のかけらが散在している。人の気配は全くなかった。小夜は、小屋のまわりと中をひとしきり調べたのち、ほんの申訳程度にしかならない入口の戸を閉める。小屋のほぼ中ほどにある囲炉裏の傍で横になると、ようやく一息ついたといえるのであろう、ほんの数分のまどろみも、小夜にとっては有難い休養であった。

 しかし、その安らぎも長くは続かなかった…小半時ほど経っていたのだろうか、小夜は小屋を取り囲む、おびただしい数の気配を感じ取っている。
(40人、いや、もっと…?)
 先刻倒した桔梗たちは、まだ目覚めぬ筈であるから、新手ということになる。一気に勝負をつけに来た、と思いながら小夜は静かに起き上がり、着物の腰紐をほどく…外の気配は、中の様子を伺いながらひと呼吸おいているかにみえる。重く張り詰めた緊張はしかし、突然に破られた−−

 入口の戸が荒々しく蹴倒され、4人の裸女たちが飛び込んでくる。と同時に裏から3人が、そしてさらに3人が天井を破って飛び降りてくる−−いちどきに10人の攻めでは、小夜といえどもかわせきるものではない−−飛びかかった女忍たちは一様にそう思った筈である。その時−−立ち上がっていた小夜は、ひらりと身体を一回転する。腰紐をはずした小夜の着物が一瞬で離れる…驚きはここからであった…その着物が見る間に、小旗大の無数のはぎれに変わり、小夜の周りを浮遊しながらその姿を覆い尽くす。
「こしゃくな、そのような惑わしがわれらに通じると思うてか?」
 くの一たちは構わず、はぎれに覆われている小夜めがけ、拳をかざして殺到する。が、ただ浮かんでいるように見えたそのはぎれはまるで意思をもつ生き物のように、その場を支配していた。それは女忍たちの顔に次々と貼りつき、視界を塞ぐ。
「ぬうぅ、と、取れぬッ」
 手で容易に払いのけられると鷹をくくっていたくの一たちが一瞬棒立ちになるその時が勝負の分かれ目−−
 着物を脱ぎ捨て女忍たち同様全裸姿の小夜が、ひといきで10体の下腹部へ突きいれていく…
 ドスッ
「うぅっッ」
 …ボグゥッ
「ふぐッう」
 …ズボォッ!
「あううっ」
 …ガスゥッ
「んうぅッ」
 …ドズゥゥッ
「あぐうぅ!」…
 裸体の女同士が狭い小屋のなかで錯綜する中、小夜と相手の女忍たちとは幾度となく密着し、こすれあう−−
 …その乳房と乳房、秘所と秘所までもが…
 ズンッッ
「うくうッ」
 …ボズゥッ
「ふううーッ!」
 …ドズッ
「うぐっッ」
 …ボスッ!
「ひぐぅッ」
 …ズドォッ
「はぐっッ」…
 10人の女忍たちが次々倒れたことをあたかも見届けるかのように、はぎれが顔から剥がれていく。そして、桔梗たちの時と同じく、10もの芳しい泉が狭い小屋のなかに溢れ出ようとしていた…

 小夜は休まず裏手へ出ると、小屋の至近にいる3人をめがけていく。「あっ」10人での攻めを過信していたのだろうか、不意をつかれた3人には、小夜の姿を認め、短い声をあげるのがやっとだった−−
 ドズゥ!
「ふぐッ」
 ズボッ
「うくうっ」
 ボスゥッ
「あうぅ!」
 3人に下腹部突きを決めるや、小夜はすぐ近くの木立の中へ駆け出していく。
「林の方へ逃げたわ!追えッ!」
 小屋を遠巻きにしていたくの一たちが一斉に追う。
「逃げられはせぬッ」
 小夜に続いて林に飛び込んでいった女忍たちはその数20余名、包み込んで必ず倒そうという意気である。あとには、林の周りに10人が残り、後詰めの構えをとる。中でも、一人の女忍は小頭格とみえ、見張りの配置を指示している。
「5人は林の間際、4人はわたしと共にここへ」

 小夜を追った女忍たちが林に飛び込んでしばらくの時が流れ−−当初、20余名の女たちが草木をかきわけていく音が続き、やがて一面の静寂が訪れている…林からは何の変化もあらわれない…いや、微かな物音が洩れたように思い、間際に並んでいた一人の女忍が林を覗き込もうと身をのりだす。
「何か見つけたの、楓?」
 仲間の女忍が声をかける。
「うン、ちょっと今何か…うっッ」
 楓と呼ばれた女忍は言葉をつまらせ、立ち尽くしているように見える。
「どうしたの?」
 近づく女忍は楓の下腹部に拳が突き立てられているのを見れたのだろうか、次の瞬間、自分の下腹部に鋭い衝撃を感じる−−
「うぐッ!」−−
(か…え…で…、逃げ…て…ぇ…)
 いとしい仲間を助けようと、健気な思いを振り絞ろうとするがそれも、すぐさま押し寄せる絶頂の波頭にのみこまれ、ただ至福の仙境をさまよっている…
(イ…イ…クゥゥゥ…!)
 既に楓も同じ甘露を味わっていることを、この女忍がしる由もなく−−
 楓とその女忍が同時に倒れ、飛び出した小夜は近くにいる女忍たちの脇に次々と張り付いていく。
 ドスッ
「ううっッ」
…ズンンッ
「おううッ!」
…ボグッッ!
「あぐっッ」
 3人はろくに構えをとることもできないまま、ただひたすら悦楽の眠りについた…

「林の中の追っ手はどうしたの!?」
 さすがに取り乱したのであろうか、小頭の女忍が配下の女忍たちに詰問している。訊かれたところで、判るものでなく、狼狽しながら「皆目見当も…」と応えるのみである。近づいてきた小夜が、一言添える…
「そなたらのお仲間は、みな、林の中で眠っておいでじゃ。半日ほどは、ゆっくり休めるはずよ…」
「なっ、そのようなことが、あれだけの数で攻め押していたというのに」
 小頭は驚きながらも配下の女忍たちに後ろ手で合図する。5人の女忍たちは、小夜を取り囲むと、その周りを飛ぶように疾駆しはじめる。5人の像はかすみ、光輪がうなりをたてるように巻き起こると、その輪をじりじりと縮めていく。輪の中から、包み込むような声が小夜に向けられる
「今度こそ、気絶していただく」
 −−と、一気に輪は小夜の身体と重なり、八方から繰り出される拳によって確実な失神が用意されようとしていた。
…ドズウゥゥッッ!
「ふぐうぅぅッッ!!」
 衝撃の音、今までにない大きな呻き声、それらはいずれも一回しか聞かれなかったと思えた…ところが…怒涛の回転が止むと、女忍たちの拳はそれぞれに虚空を突き、小夜の姿は認められなかった、いや、かれらの視界より下に小夜はいた。立ち姿でなく、まるで奇術のように横になって宙に浮いた身体のその両手両足を、4人の下腹部に的確に突き込んでいたのである。四肢を同時に突き入れたことによって、下腹部にめりこむ鈍い音も、4人の呻き声も同時に発せられたのだった。それでも小頭の女忍は自分の眼下に瞬間移動した小夜の鳩尾を狙おうとしたが、自分の下腹部に飛来した小夜の拳を避けるのに手一杯だった。4人が崩れ落ち、小夜が足元からふわりと地に立った時、小頭の女忍は、さっと後方へ引き、構えなおす。
「できるわね、わたしの突きをかわすなんて…」
 小夜は残った二人の間合いをそのままに、静かな口調できりだす。
「そなたこそ、ここまでわれらの攻めを退けるとは…でも、わたしも甲賀の霞と呼ばれた女。負けるわけにはいかぬ」
「甲賀の霞どのと申されるのか、この場はそなたで最後ゆえ、わたしも素性をあかしまする。根来の小夜と覚えてくだされ」
「根来の…小夜…もしや、上忍宗家筆頭のあの小夜…!」
「そうともいわれておりますが、わたしはただ二十歳の女性でもございます。霞どの、もう十分と思われて、引いてはいただけぬか?」
 諭すような小夜の言葉に、霞はかえって闘志を剥き出しにする。
「道理で桔梗が歯がたたなかった筈…でも、この霞、いかにそなたにひけをとろうとも、この勝負捨てませぬ。いざ、参りましょうぞ」
 −−裸姿の二人が再びの勝負にのぞむのも止む無き諸行であろうか。

 霞は桔梗以上の腕とみえ、豪放かつ繊細な攻めを繰り出している。身体の全てを用い、またある時は、身体ごと預け小夜の反撃を完封している。が、小夜の方も霞にたいし一切の決め手を与えていない。−−
「ピシッ」
「パンッ」
 時に、二人の乳房や尻が僅かにぶつかりあい、どちらともなく「うッ」「ふぅ」と声があがる。二人の互角の勝負がどれくらい続いたであろうか、霞はいよいよ最後の賭けにでる−−くるりと倒立した両の足で、小夜の身体を挟み込み続いて上体を起こしながら、自由を奪った相手の鳩尾に両の拳を打ち込もうとする。自らの下肢を相手の前に曝す、いわば捨て身の技である。霞の両足で左右の脇腹を決められた小夜は思わず「うぅ」と呻く。 両手はすんでのところで、その挟み技から逃れているため、霞の秘所を突けば、この束縛から抜け出すことはできよう。だが、小夜には出来なかった。秘所は急所であるだけでなく、女の存在そのものではないか−−小夜は相手のすべてを賭けた勝負に真っ向から向かっていくことを選んだ。霞の両拳が確実に小夜の鳩尾をとらえたと思えたその時−−小夜は大きく弓なりに上半身をのけぞらせる。拳は小夜の両の乳房を猛然とした勢いでかすり、小夜の口から「んふぅっ」と短い呻き声が洩れる。乳房を激しく揺さぶられ、それでもやっと耐えた小夜が今度は、霞の足をとり巴投げの格好で投げ飛ばす−−
「あっ」
 地面に叩きつけられた霞が仰向きに転がったところへ、既に小夜の拳が追いついている
−−ズボォォッッ!
「んぐうぅぅっッ!」
 絞り出すように発した霞の呻きにつづき、今までの激しい運動量に比するかの如く、止め処ない泉が湧き出でる。
(は…ぁ…イク…ゥ…)
 霞のはたらきに報いるかのような、至上の絶頂が、倒れた女忍を包み込んでいた…

 小夜は少しく、息があがっている。
「霞どの、素晴らしい勝負をありがとう…」
 傍らに膝をつき改めて霞の表情を眺めた小夜は、ふと桔梗の時と同じ衝動にかられている。
(どうして…この気持ちを抑えられないのか…それがこの者たちを、愛するということなのか…)
 揺れる心を引きずったまま、やはり霞の寝顔に自らの唇を近づけていく小夜…と、その時木立のなかでふっと影が動き、みるみる遠ざかっていく気配がある。
(まだ一人いたのね。この事を仲間に知らせるつもりでしょうけれど、逃がすわけにはいかないわ…)
 小夜はすっくと立ちあがると、林づたいに逃れていこうとする気配を追って駆け出す。着物を身に着けている時も俊敏なこなしを見せていた小夜であったが、全裸姿になると更に一層の磨きがかかり、疾駆するさまは、殆ど飛ぶようにみえる。ほどなく、逃げる女忍の姿を視界にとらえた小夜は、腕のきゃはんを僅かに千切ると、前方を走る女忍めがけて投げつける−−すると千切れた布片は瞬く間に4枚の小旗大に拡大し、流れるように宙を飛ぶと、前をいく女忍の四肢にまとわりつく。
「えッ?」
 女忍は、最初なにが起きたのかもわからない−−しかし、その4枚の布片はそのまま女忍の身体を宙に浮かせ、飛んできた勢いを巧みに抑えながら近くの大木に貼りつける−−
ズンッ
「あうっ」
 軽く背中を打ちつけた女忍はしかし、その痛みを忘れ驚くばかりである。正面を向くよう木に固定された女忍が布片を剥がそうともがく間もなく小夜が追いつく。
「ああ…あ…いやぁ…」
 女忍は細かく身体を震わせすっかり青ざめている、小頭や、仲間全員が倒れた姿を見ているだけに、どうしても恐れが先にたつのであろう、小夜が一歩踏み出し、枯葉を踏みしきる乾いた音が響いた刹那、女忍の下肢から僅かながら流れ出るものが見えた。

 失禁のありさまを見て小夜は、歩を止める。そして3尺ほど離れたところから、気遣うような声をかける。
「そなた、恐れることはないわ…わたしは、そなたたちの誰一人、傷つけてはいないのよ…」
 女忍は無言ながら、小夜の一言にかすかな変化を示す。変わらず震えているものの、少し肌色が落ち着いてきたのであろうか。ややあって女忍が緊張に震えながらも口を開く
「わ、わたしを…どうする…つもり…?」
小夜は微笑みゆっくりと言葉を返す−−
「少し聞きたいことがあるの。教えてほしいの…」
「わたしは、何も知らぬ…知りませぬッ」
 女忍はかぶりを振る、多少の気丈さが残っている。小夜は女忍のやや下方から覗きこむように見つめる−−
「せめて、そなたの名だけでも教えていただけませぬか…?」
 その一言に、女忍は僅かながら胸襟を開きつつあるのか、「弓月(ゆづき)と、申す」とだけ答える。
「弓月どの、よい名じゃ…この小夜とも近しく話をして下され…」
 小夜は、弓月の間際にまで接近するが、弓月の方は黙して小夜の目を見つめるのみである−−小夜の巧みな催眠の術中に、既にして半ば身をおいている弓月…小夜はそっと弓月の乳房と秘所に手を添える…目を通した催眠に、身体への催淫を加えることによって、弓月から洩れなく聞き出す狙いである。丁度エックスの字型に貼りつけられた弓月の身体は、余すところ無く曝され、押し広げられた下肢には、整った茂みとその下方にひろがる愛くるしい蕾のふくらみ、鮮やかに色なす肉襞が露出していた。乳房をもみ乳首をつまむ−−かたや秘所の茂みに分け入った手は親指と人差し指で茂みの下方、蕾の先端を優しく包み、 3本の指が襞の裂け目を少しづつ押し入っていく…弓月はもはや目を閉じるでもなく、ただ小夜に施される愛撫のままに身をゆだねている。
「は…うふっ…ん…」
 肉体の反応は徐々に加速し、弓月の瞳には小夜の姿がとろけるように映っている。

 やがて弓月の身体には、ゆるやかにこみ上げる歓喜の頂が訪れる−−今までの女忍たちと違い気絶しているわけでなく、半ばではあるが明らかに、自らの意識として受けとめていた…
「はぁ…ぁ…いい…わ…ぁ…あはぅ…う…うれし…い…」
 弓月の目から一筋の涙がこぼれる−−小夜と織り成す情愛の交歓は弓月のあらゆる思いに応えるかのよう…そのまばゆいばかりの頂点は、小夜をして、まるで自分のことのように満ち足りた感慨にふけらせている。小夜は思わず感極まり、陰裂に差入れていた指を奥深く挿入していく
 …ズブゥッ
「ふぐぐ…ッ」
 弓月が瞬時に喘ぐ。小夜は、はっと気づき、指を戻す。
(いけない、気絶させては今聞き出せなくなってしまう…)
 少し冷静さを取り戻した小夜は、再び優しく包み込みながら、ひとつひとつゆっくり、弓月に訊ねていく。「そなたたちの手勢はどれくらい残っているの?/この先、どこかで待ち伏せしているの?/何故これ程までに密書を狙うの?/そなたたちに命ずる者達は何者なの?…」それらの質問がひと区切りつくと、小夜はおもむろに自らの股間に手をまわす。
「んんぅ…」
 二本の指を自らの陰裂の中に差入れると中から向日葵の種状の粒を引き出す。その粒は強めに押すと二つに開き、中には極めて小さな紙片が端正にたたまれていた。小夜は改めてその密書を見つめる。左端に割印があるが、書状の文面自体は意味が不明瞭なものである。しかし、ここまでに弓月から聞き出した情報と照合すると、小夜には、ぱっと視界が広がったような、この一件の全貌が見えてきたように思えたのである。小夜には、ある決意がみなぎっていた…

(第二部 完)

第三部


 山あいの木立は、夕焼けのほのかな残光だけを頼りに薄暗く連なる。その一本の老木に、四肢を拘束され捕らえられた弓月が、小夜と向かい合っている。時が流れていた…弓月は、小夜の包み込むような施しを身体一杯に受けとめ、催眠の術だけでは決して為し得ない、溶け込むような美しい迷宮の中にいる。その限りない幸せを享受しながら弓月は、小夜に問われるまま、自分たちの、そしてこの度の一件について語り尽くしていた…

 小夜はひと通り弓月の答えを聞き終わると、僅かに唇をかみしめる。弓月は小夜の知りたい多くを話してくれた。そして小夜はこれからの対応を練り直す必要を痛感したのである。−−まず一つは、この先の舟着場に40人もの甲賀くの一衆が先回りして潜んでいること…恐らくは舟に乗りこむ客の中にも大勢もぐりこんでいるに違いない。とすれば、仮に舟着場まわりの女忍たちを振り切ったところで、乗りこんだ舟の上での勝負にもつれこむ可能性は高い。小夜は無論のこと、甲賀の女忍たちも他の客や旅人たちに危害を加えること決してないのだが、何分狭い舟上でのこと、舟が揺れたり或いはすれ違いざまぶつかる等関係のない多くの人々を不慮の事故に巻込む危険があった。忍びなら泳ぎも達者であろうが幼な子をつれた母親や、年寄り、その他いきなり川に落ちて命を危険にさらす者は少なくなかろう。さりとて、舟に乗らず遠回りに陸路を行けば、この先、何度も甲賀くの一衆との勝負を重ねてゆかねばならない。甲賀女忍たちが何度仕掛けてきても、その都度勝負に勝てばよいことではある、一度気絶させた相手と再び勝負にのぞみ、またも気絶させる…それもあり、ではあろう。だが小夜にはいささかの抵抗があった。もし勝負でなければ、ひとりひとりの女忍たちと、むしろ仲むつまじく交わろうとすら思っている小夜である、同じ相手を何度も気絶させるなど、出来れば避けたいと思うが本音…

 ではどうすればよいのか、逃げおおせることは出来ぬのか…やや焦燥にかられはじめた頃、弓月の口からこぼれたいくつかの言葉に小夜はふと光明を見出す−−「小夜どのの持つ密書は、われらにお命じになった小黒の殿がお持ちの書状と対をなしておるもの…」「それぞれの書状は一つでは用をなさぬが、二つ合わせれば、莫大な財宝の秘密が解ける…」「小夜どのの書状にはその財宝の所在を解く鍵が隠されている…」そして特に小夜が注目したのは、「小黒の殿の書状は、その財宝が自らを含む数名の不正によって蓄財されたことを証する連判状である…」という一言である。小黒一派は、隠した財宝を掘り出そうと、小夜の書状を付け狙っている、が、かれら自信が持つ書状も、もしそれが天下に露見すれば、たちまちに一網打尽の責めを負うことになろう−−ここに至り、小夜は自ら持つ書状を守って身を隠すことより、かれらが持つ書状を奪い、一切身動きできぬよう、もはや小夜を追うことが逆にかれらの破滅を招くことになるよう、うってでる道を選んだのである。

「して、その書状は今どこに?」
 小夜の問いに−−
「城中ではかえって不用心ゆえ、われら甲賀の女館にてお預かりしており申す」
「その館はどこじゃ?」
「西の庄のはずれ、鉢伏山の麓…」−−
(鉢伏山ならば、ここから左程遠くはない。かれらが舟着場に人を配し、また桔梗や霞たちの一群を眠らせている今こそが好機…!)
 小夜の心に迷いはない。攻守ところを変え、ひとたびこの勝負を制すれば、小黒一派も甲賀衆への命令を取り消すしかない。となれば、その後は晴れて小夜が、甲賀女忍たちとの新たな関わりを深めていくことも出来よう。知らず、胸の高鳴りを覚える小夜…

 眼前の弓月は、全てを話し終わり、小夜の次の質問を待っているのか、満たされた表情のまま…そして今の小夜にとってはもはや気絶させる相手でしかない。
(…弓月どの…そなたのお陰で道が開けるわ…今は気絶してもらうけど、いつかきっと…愛し合いましょう…)
 小夜は弓月の下腹部の至近で、ぐっと拳を構える、が、当然の情として躊躇もするもの−−
(身動きできぬ相手に突き入れるなんて…)
 −−ざわっ−−
 その時一陣の風が舞い、揺れる木立の林が小夜の目にはいる…ふと、あの林の中での出来事が思い起こされていた…

 あの時…小夜を追って林の中に飛び込んだ裸女の一団は24名。押し包んで一気の勝利を意気込むかれらは、しかし、密集する木立にさえぎられ一組3〜4人の動きに分断される。しかも林のなかには身の丈ほどもある草木がそこかしこに群生し視界をさえぎっている。迎えうつ小夜にとっては格好の場、いや、最初から小夜はわかって誘っていたのである。草木の茂みや木立の陰から変幻自在に仕掛ける小夜の鮮やかな拳…
 ドブゥッ
「ふぐぅ!」
 ガスッ
「あうぅ」
 ズボォッ
「うぅぐっッ」
 ドズッ
「ぐふッ」…
 それらが新たな相手に6回、7回と繰り広げられたあと…そこには、あちこちで四肢を投げ出し倒れ伏す女忍たちが残された。かれらは、みな一様に桃源郷の夢に包まれているのであろうか、涌き出る泉に草花の潤っていくさまが一面に見える…ものの10分程の出来事である。残りは僅かに一人…女忍が一本の木を背に、追い詰められていた。
「はあ…ぁ…ぁ…」
 女忍は、あっという間に仲間を倒された驚きと、圧倒的な技量の差を思い知り、極度の震えと絶望に突き落とされている。女は手をだらりとおろし、目をつぶる−−自らの身の程を知り、覚悟を決めたかのように・・・

 近づく小夜は少し立ち止まり、優しく、そっと触れるような声をかける…
「そなたの気持ちはわかるわ…でも案ずることはござりませぬ…この小夜はそなたたちと同じ、くの一。決して傷つけたりは致しませぬゆえ…」
 女忍は、やはり目をぎゅっと閉じ、こわばったままである。小夜は続ける…
「そなたの名を聞きたいわ…また、会いたいもの…」
 ここでようやく返ってくる言葉がある−−
「わたしを…もてあそぼうと…されるおつもりか…?」
 小夜は激しくかぶりを振る
「今そなたを…愛したいの…でも…」
 やや間をおき
「でも…そなたの腹を突かねば…勝負はつかぬ…時が許さぬのです…わかってはいただけますまい…」
 小夜の目にうっすらと光るものが浮かんでいる。
 少しの沈黙が流れただろうか、女忍は目を閉じたまま、ゆっくりと口を開く−−
「小夜どの…お情けうれしくおもいまする…されど、この腹…ひと思いに突いて…くだされ…例え苦しくとも…堪えまする…」
「いいえ、決して苦しくはござりませぬ、そなたは半日ほど安らかな夢に包まれ、お休みいただくだけなのです…」
「有難いお気遣い、痛み入りまする…わたしは、信乃(しの)と申す者、小夜どのにこの身体、お預けいたします…」
「ありがとう、信乃どの。後日かならず会いに参ります…その時は是非とも…親しくお付き合いくだされませ…」
「…はい…必ず…」
 −−小夜は潤んでいる目をそのままに思いを込めた拳を信乃の下腹部に突き込む−−
「ご免ッ」
 ドズゥ!
「んぐうぅ…!」
 −−小夜の拳がめりこんだ瞬間、信乃は大きく目を見開くが、すぐにそれは閉じられ、すぅっと一筋の涙がこぼれる…
 そして頬を半ばまで伝わろうとするころ、既にそれは歓喜の雫に変わっていた…
 倒れかかる信乃の身体をふんわり包むように受け止めた小夜は、しばしこの女忍を抱きしめたまま、動かない…
「あぁ…信乃どの…」

 −−そょ、と、風が頬を伝い、小夜ははっと我にかえる。弓月を目の前に、高まる思いが脳裏を駆け巡る小夜…
(信乃どのの時と同じ…こうして二人きりでいるというのに…今は…そなたの腹を突かねばならぬ…)
(…弓月どの、許して…!)
 ドブッ!
「うぐうっ…!」
 弓月の下腹部にめりこむ拳…今までの催眠と催淫によって、二度、三度とゆるやかな絶頂に達している弓月ではあったが、この一撃が女忍の性感帯に究極の動機付けを与えたことは、秘所から勢いよく放たれる慈愛の泉につづいて乳首に滲む乳汁のしたたりが弓月の肉体を伝うことからもわかる。女を木に固定していた4枚の布きれは、はらりと剥がれ落ち−−
 ゆっくりと倒れ掛かってくる女忍を、小夜は強く抱きしめると、むさぼるように唇を重ねる…二つの裸体は乳房も下肢も、密着するように絡み合う。小夜の目には大粒の涙、そしてその身体は既に弓月の情愛が生み出すなめらかな液体にまみれている。
「…ん…んん…」
(…弓月どの、このままいつまでも…)
 しばしの時がじっと二人のまわりで静止する…そして遠慮がちに時が小夜を促す、新たな勝負へと…。弓月を優しく地に横たえた小夜は、立ちあがると、傍らにある密書を封じた小粒を、再び自らの陰裂に大事に収め…
 もう一度弓月の寝顔を見つめたあと、意を決し、風に舞うように走り去っていく−−満たされた眠りにつく48人のくの一たちに、しばしの別れをつげて…

(第三部 完)

第四部


 鉢伏山までの道のりは左程でないが、山間に隠した甲賀の女館を小夜が探し当てた時には、さすがにとっぷりと日が暮れていた。間道から奥深く分け入ったところにあるその館に気づく者は滅多にいまい。それでも、この程度の隠し館は小夜にかかれば比較的容易に、見つけ出すことができる。館の周囲は鬱蒼とした木立に覆われ、日中でも暗いのであろう、夜の帳がおりれば、限りない漆黒の底に沈みこむと思えたが、館の周囲に点々と灯される松明によって、かろうじて僅かな明るさを確保していた。

 小夜は館の方へ、しばらくの間、目をこらしている…この館にどれ程の女忍たちが起居しているのであろうか、館のつくりは、守りはどうなっているのか…?−−桔梗たち、霞たち合わせて59人は明朝まで眠っている、しかも弓月の情報によれば舟着場の方へ40余人がまわっている、都合100人ものくの一たちが、この館から出払っていることになる。となれば、いかに甲賀くの一衆が大勢とはいえ、この館に残っている者はそう多くない筈…そして一気の勝負をかけ、攻め出た彼らが、よもやこの館を逆に攻められるなどと、思いもつかない筈である。館内外の気配を注意深く探っていた小夜であるが−−
(この分では20人ほどしか、おるまい…)
 今までの勝負を思えば、たやすい、とも言えるであろうが、小夜が気を抜くことはない。自らも、相手も、全て裸体同士のくの一勝負が今、大詰めをむかえんとしている…

 館を囲む木立の陰に、まばらに配された数人の気配を感じる。元は厳重な結界を張っていたであろうに、これではやはり手薄というしかない、一人が倒れても、遠く離れた隣の女忍が気づくこともない程に。小夜は注意深く一人の女忍の側に忍び寄る。微かな気配に振り向いた女忍の下腹部に、小夜の狙い済ました拳が飛び込む−−
 ドブゥ!
「うぐっう!」
 女忍は木の根元まで崩れていき、動かなくなる…股間から噴出す愛液は木にしみ込んでいく…。二人目は後ろから口を塞ぎ、驚く女忍が身体をひねるところで下腹部への突きを決める−−
 ズブッ!
「はぐぅッ」…。
 三人目は木にぴったり張りついていたが、木陰から不意に飛び掛ってきた小夜に「あっ」と、短い声をだすのがやっと−−
 ドフッ
「あうっ!」…。
 そして四人目は膝をつき茂みの中に潜んでいたが、脇からいきなり飛びついた小夜に転がされ仰向けになったところを、難なく突き入れられる−−
 ドズウッ!
「ふぐぅッ!」
 …木立の中に配された女忍たちが全て悦楽の眠りについた瞬間である。

 茂みに紛れ、館の方を覗うと、大きな母屋を取り囲むように点在する、4つの小屋が見える。見張り小屋なのであろう、先に押えておかねばならぬ拠点には違いない。気取られぬよう一棟の小屋に近づく小夜…が、中に気配はない。大勢が館に詰めていた時であれば、この小屋にも充分な見張りが配されていた筈、いかに現状が手薄か推し量られる。次いで2つ目の小屋を密かに探る…僅かな隙間から中を覗う小夜の目に、意外な光景が飛び込んでくる。そこには二人の女忍が横になって肉体を密着させ、互いの秘所に舌を這わせている、艶めかしい姿が浮かび上がっている。−−
 ピチャ…
「んふぅ…」
 クチュル…
「あは…ぅ」
 ひそやかな愛を紡ぐ二人が恐らくは、自由で閑散としたひとときを見出し、隠れた行為におよんでいるのか−−小夜の劣情をいたくくすぐる眺めではある−−
(…素敵ね…私も加わりたい…でも今は、かなわぬ望み…)
 二人のうち、上にかぶさっている女が自らの秘所の興奮に思わず上体をのけぞらせる−−「はあっ…ん」−−と、そこへ忍びよった小夜が、狙いすました拳をその下腹部に突きこむ−−
 ドズゥッ
「んぐっッ」
 −−下に横たわる女忍は、突然、愛液のほとばしりを顔に受け「すごいわ、どうしたの、美鈴…?」と尋ねるが、女の下腹部にめり込ませたまま、瞬時その身体を支えている小夜が、代わりに答える−−
「美鈴どのは、絶頂にいるわ、そなたもすぐに」
「えっ!?」
 小夜はもう片方の腕に作った拳を下の女忍の下腹部に打ち込む−−
 ズブゥッ!
「はぐうぅッ!」
 −−女はがっくりと顔をそむける。小夜は上に乗ったまま気絶している美鈴を抱き上げ、下にいた女忍の隣に寝かせると、しばし二人を見つめているが、すぐに次の相手にむけて駆け出していく…

 3つ目の小屋には僅か一人が詰めるのみ。飛びこんだ時、声をあげようとする女忍の口をいち早く塞ぐ小夜−−
「くせ…んぐぐ…」
 くせもの、と言いたいのであろう、小夜の手を払いのけようと苦しみもがく女忍の下腹部に一発−−
 ズボォッ!
「ふぐぅぅッ」
 女は濁った呻き声と共に崩れ落ちる。
(…今は気絶してもらうしかないの…許して…)
 4つ目の小屋にはしかし、数名の気配が感じられ、小夜は改めて身構える。小屋の壁を回りこみ、まず入口の外に一人立つ女忍の眼前に飛び出すと、忽ちのうちに当て落とす−−
 ドフゥッ
「ううっ!」
 −−
「千鶴…?」
 僅かな物音に小屋の中から一人出てくるところを−−
 ズンッッ
「あぐッ!」
 倒れこむ女忍とすれ違いに小屋に入った小夜は、中にいる二人に向かって走り寄る。
「何者ッ」
 狼狽し声を詰まらせる女たちに、小夜の左右の拳が同時に突き入れられる−−
 ガスゥッ
「おぐっッ」
 ドボッッ!
「ふぅぐッ」
 折り重なり倒れた女忍たちを見やりながら、小夜は、なお身を引き締めている
(あとは、いよいよ母屋だけ…)

 見張り小屋の結界を抜けた今、館の母屋へ忍びこむのは難しいことではない。入念に気配を断ちながら廊下に立ち入っていくと、ところどころで一人ずつ立ち番をしている女忍の気配が捉えられる。小夜は廊下の壁に影のように張り付きながら接近し、何らの抵抗も受けず、脇から突き入れていく−−
 ドズッ!
「うぐぅっ」−−
 ボズゥッ
「ぐふっッ!」−−
 ズボォ!
「はうッ…」
 一人、また一人と気絶させ三人目を眠らせたその時、遠くから廊下を流れてくる話し声…二人の女忍が何の警戒もなく、近づいてくる。
「小黒の綾姫じきじきに、来られるとは、此度の件、余程のことね」
「小夜という女子ひとりにわれら総出でかかるまでもないと思うけど」
 と、廊下の角を曲がったところで、いきなり突き込まれる拳の連打−−
 ボグゥッッ!
「ふぐうッ」
 ドズッ!
「はう…んっ」
 −−二人の会話は途切れ、その後は瞑目のかなたへ引きこまれていく…
(小黒の綾姫…?)
 小夜にとって、更なる切り札となる者であろうか?

 館の一角に、厨房らしき部屋が見え、中に女忍が一人、片付けをしている風である。小夜は大胆にも、背後から小声をかける−−
「そなた一人で大変ね…」
 声をかけてきたのが仲間と信じて疑わない甲賀女忍は背を向けたまま。
「そうね、でも、綾姫様の膳は終わったし、あとは竈の掃除を…」
 小夜はそっと女の肩に手を置く
「少し、休みなされ」
 心遣いを受けたと思い女は明るく振り返る−−
「ありがと…うぐっ!」
 女忍の下腹部には、至近から繰り出された小夜の拳…気絶した女忍は余熱で多少の暖がとれそうな竈の傍らに横たえられた。廊下を更に奥へ進み入ると、蝋燭の明かりこぼれるひと部屋を見つける。壁に張り付きながら慎重に中を覗うと、書物庫であろうか、二人の女忍が何事か、携わっている。よく見ると、一人は小机に向かい筆をとっており、もう一人は書棚の整理をしているようである。
(小黒の密書はここにあるのかしら…?)
 小夜にある考えが浮かぶ−−
(あの二人には後で役立ってもらうやも知れぬ…)
 小夜は部屋に入るや、小机に向かう女忍に飛びつく。今度は、その拳は鳩尾と臍の間に突き当てられる−−
 ドスッ
「うっッ」
 間髪おかず書棚の前に立つ女忍の脇に張り付く小夜のひと突き−−
 ズンッ
「ふぅッ」
 …一人は小机にうつ伏せに倒れこみ、もう一人は、手に持つ巻物をこぼし、散乱させた中へ崩れ落ちている。二人とも、今までの女忍たちのような愛液の開花はない。二人に向かい囁く小夜…
「浅くしておいたわ…後で働いてもらうやも知れませぬゆえ…」

 館の最奥部に辿り着いた小夜は、いよいよの時をむかえ、細心の注意をはらう。廊下の向こう、恐らくは控えの間があり、更にその奥に主の寝所があるに違いない。
(控えの間に二人ほど…奥の間にも数人程度か…?)
 入念に気配を読んだ小夜は、ひと呼吸様子を覗うが特段の動きは感じられない。
(一時に決める…!)
 控えの間の襖をすっと開けると、すぐさま不寝番の女忍二人が立ち上がる、が、薄暗い部屋の中、裸姿の小夜を一瞬仲間と勘違いしたのであろう−−
「どうしたの…?」
 と次の瞬間−−
 ドブゥッ!
「ふぐうッ」
 ズドォッ
「あうッ!」
 倒れこむ二人に構わず、小夜は一気に奥の間の襖を開ける。中には三人…二人の女忍が供をし、真ん中には布団から起き出し凍りついた表情の女性が一人…。
「おのれッ」
 二人の女忍が向かってくる、が、かれらの遅い拳を避けるは容易く、大きく隙のあいたその下腹部に、電光の突きがめりこむ−−
 ドボオォッ
「はぐうっッ!」
 ズブウッ!
「んぐうう…!」
 (…ひ…め…お逃げ…を…)恐らくはそう言いたかったのであろう、半開きの口からは涎が垂れ、下の口は言うに及ばず…

 一人残された女は、氷のようにこわばり、声もない。小夜は女の前に膝をつくと、その瞳を覗きこみながら静かに語りかける−−
「小黒の綾姫であられますね…?」
 小夜の問いにも、綾姫と名指された女の口元は小刻みに打ち震えるだけである。
「わたしは、小夜と申しまする…此度、小黒家の書状を頂戴に参った次第…」
 その言葉にようやく、かすれた声が返ってくる−−
「そなた…が…小夜…!」
「いかにも。そちらの書状を頂き、もう二度と、密書にまつわる暗闘とならぬ様、計らいとうござる…この意味、姫には十分お分かりでござりましょう…」
「ま、まさか、あの書状の秘密を…と、解いたとでも…?」
「おおよその見当はついてござれば…わたしは、財宝なぞに興味はござりませぬ、ただ、互いに無益な所業を収めたく…書状をお渡しくださりませ…」
 −−綾姫は、やや気丈さを取り戻してきたのか
「そのようなもの、この館にあると思うてか、無駄なことじゃ」
 とはねつけるが、更に小夜が
「そう、仰せになると思っておりました…」
 と言葉を継ぎながらその瞳に一段の輝きが宿った時、姫の表情に変化の兆しが現れる…
「…あ…あ…」
 開かれた目はそのままに、みるみる無機質な面持ちに転じていく綾姫…小夜を眼前に見出した時から、既に催眠の術が進行しており、今それが、完了したのである。この先は、小夜の操るままに語り、動くのみ…

「綾姫様、書状はいずこにございます?」…
「書院にて…文箱に…収めて…いる…」
(やはり、あの書物部屋…)
 小夜の狙いどおりである。
「ご案内を…」
 小夜の言葉に、すっくと立ち上がった綾姫が、迷わぬ足取りで廊下を抜け、書物部屋へ向かう。書棚のところへ着くと、奥の方に大事にしまわれている文箱をとりだし、小夜の前に差し出す…箱に収められている書状をあらためた小夜は、弓月の話しが寸分違わず事実であることを確認した。
(これが、小黒の不正を決定的に証する、連判状…)
 小夜は自らの股間に手をやり、粒状の器を取り出すと、中の書状を広げ、小黒家の書状と照合する−−左右の割り印もぴたり合い、まさしく本物…小夜は二枚の書状を丁寧に折りたたむと、器に収め、再び自らの陰裂に差し入れる…
「…う…」
 少しく声をあげながら、それでも、これで解決に導かれる安堵感に浸りつつあった。

 小夜は棒のように無言で立ち尽くしている綾姫を部屋の柱の傍に連れていき、着物の腰紐を解かせる。その紐で身体を柱に縛りつけると、小夜は綾姫の両の肩に手を置き、念を込める−−
「むん!」
 …すると、女に表情が戻り、縛られている自分に驚くのである。
「な、なぜ…ここに…!?」
 小夜は空の文箱を見せ、一言ずつ、噛み締めるように話し掛ける…
「綾姫様、小黒家の書状、確かに頂戴致しました…この上は、わたしを追わせるなど、無用の手出しはされませぬよう…そのようなことすれば、即座にことが露見するよう手筈を整えてござりまする…お分かりでござりますな…」
 綾姫はもがきながら、訴えかける口ぶりに変わっている−−
「そ、その書状は、小黒家の命運そのものじゃッ…ろ、露見などと…お、お願いでござります…」
「そちら次第でござりまするぞ」
「あい分ってござりまする。決して、決して…手出しなどいたしませぬ」
「もしもの時は…おわかりかと存ずるが…」
「いえ、そのようなこと、決して…」
 重ねて念押しした小夜が、綾姫の目に疑念がないとようやくの断を下したのち、付け加える−−
「わかり申した。姫の言葉を今はお預かり致しまする。わたしは、この場を失礼致しますが、姫には、もう少し、そのままでいて下さりませ。そこな、倒れております二人が、一刻もすれば目覚めましょうほどに…」
 憔悴しきった綾姫をあとに、小夜は館を出る。ここから、舟着場を避け長き陸路の旅…その長き時間はしかし、目的の地まで一切の、まるで水をうったような平穏のまま、務めを果たすことを約束する時の流れでもある…小夜がそう実感したのははるか、目ざす城下にはいった後のこと…あまたの甲賀女忍たちを気絶させた拳にふと、目を落とし、感慨にふける小夜は、それを柔らかな手のひらに戻し、初春の陽光にかざすのであった。

(第四部 完、「くノ一失神勝負」完結)